長岡BHの牽引者、Fostex佐藤晴重氏ご逝去(T_T)


写真はFE208ES-Rを装着したD-58ES、2002年3月にFE208ES後期型と同時頒布された18mm厚シナ・アピトン積層合板製で、佐藤氏組立て所蔵品。(2007年3月)
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Fostex佐藤晴重氏ご逝去
 フォステクス・販売促進グループの佐藤晴重氏が病気療養中のところ1月17日に亡くなられました。私はイベントなどで少し話しをした事がある程度でしたが、お通夜に参列しました。

長岡鉄男先生のバックロードホーン自作スピーカーへの理解者としての佐藤氏
 長岡鉄男先生のバックロードホーン自作スピーカーというのがあります。詳しくは他のホームページなどをご参照下さい。バックロードホーンは1930年代にアメリカで産まれ、1970年代を最後にイギリスのタンノイらを除き、日本のメーカーが捨てた技術です。それを長岡先生は開口率を下げ、板取の制約を受けながらも音道を長くしつつ、キャビネットの剛性を高めるなどして設計を練成させました。一方ではスピーカーユニットメーカーのフォスター電機の子会社であるFostex(平成15年4月1日吸収合併)がバックロードホーン向きの磁束密度の高いユニッの提供を行ないました。
 スピーカーユニットメーカー側の協力なくして長岡BHの発展も無かったのです。長岡BHとは長岡先生とFostexとファンによる協労の産物なのです。
 佐藤晴重氏は長岡鉄男先生の設計思想を深く理解して、まさに二人三脚で長岡BH牽引されてこられました。
 佐藤氏はFostex FE-103シリーズの限定版FE103G(金色仕上げ)?辺りから参加されているようです。20cm級ではFE208S頃には担当されていたそうです。

○FE208ES-Rの奇跡
 音を聞くには振動板を電磁制動させる現在のスピーカーシステムはデジタル化が進むオーディオにおいて数少ないアナログ的な要素が強い箇所です。私にとってスピーカーは単なる音の再生装置に留まるものではありません。アニメを中核とするオタク的な世界観を再現し、私の感覚器へと情報を伝達する極めて重要なデバイスでもあります。
 オーディオは音を聞くのか音楽を聞くのかという神学論争もどきの議論がありますが、現在では映像再生との融合で「音」を聞く要素が強まっています。しかも、DVDは低域の録音S/Nレベルが高いので、製作者の意図する高い音圧でリニアリティ(出力信号が入力信号に対して、正確に比例していること)のある低音を再生するというのは、難しいのです。なぜ、難しいのかというと、低音を出すには一般的にバスレフもしくは密閉型のキャビネットに重い振動板を実装した大口径のユニットを装着して駆動します。しかし、重い振動板は反応速度が遅くなるわけですし、再生上のリミッターにもなるわけです。軽量振動板では低音が出ないわけなのですが、それを背面の音を利用してホーンで増幅して再生するのがバックロードホーンの仕組みです。
 バックロードホーンは軽量振動板のユニットが使えますが、キャビネット内部のホーン全体の空気を押すわけですので、その反動があります。キックバックがあるわけです。スピーカーユニットとして制動力が問われ、また、振動板の剛性も必要です。一方ではスピーカーユニットとして制動力を高めるために、磁束密度を上げると、低音が出にくくなります・・・・結局、物理的リミットの上限を見据えた巨大かつ複雑な構造のスピーカーキャビネットで低音を稼ぐということになります。
 D-7シリーズ→D-50→D-55→D-58とキャビネットは大きくなりましたが、D-58,D-58ESはFE208ESでは駆動しきれていないのではないか?という疑念がありました。
 2007年にFE208ES-R登場し、制動力が高まり、振動板の剛性も高まり、背面の磁性体もフェライトからアルニコになったのためコンパクトになりと、大幅な進化が得られたのです。FE208ES-Rは中音域の音色も艶やかになりまして、フルレンジユニットとしての全音域での特性は大幅に高まりました。直裁に言えば、FE208ES-Rの登場を持ってして、長岡BHは完成したと言えるでしょう。
 佐藤氏は限定ユニットの企画立案からタッチされていたようです。私は佐藤氏の強靭な意志無くしてはFE208ES-Rは存在しなかったのではないかと推察致します。長岡先生の死後(2000年)、自作スピーカー界を名実共に牽引されてきた佐藤氏のご逝去は、長岡BHと日々過ごしている私にとって痛惜の極みなのであります。

御参考
http://www.audio-k.com/audio/craft.htm
https://community.phileweb.com/mypage/entry/123/20090124/
長岡BH、奇蹟の軌跡『FE208ES-R登場』!
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