アメリカ崩壊に備え、エネルギー・食料自給率を引き上げよ。

1.アメリカデフォルトが迫っている。
 米政府が8月2日までに米国債務上限を14兆3000億ドルから引き上げることができなければ、米国債の利払いや元本の返済ができなくなる。8月15日に米国債の大型償還が控えている。7月の格付け会社の動向を注視する必要がある。
 米国債の法定上限は法改正して凌ぐとの見方が一般的であり、償還不能は無いと言われている。しかし、アメリカのデフォルトはそれほど先の話しでもない。

2.先に火の手が上がるヨーロッパ
 欧州の3流金融機関がECBに抵当で入れているギリシャ国債の掛け目引き下げが目先の焦点となっている。ギリシャ国債の債権価値が例えば50%などに低下すると、ECBに対して追加の担保を入れなくてははならない。経営基盤の弱い金融機関は破綻する可能性もある。市中で流中しているギリシャ国債は12兆円程度。ECBかIMFが救済しなければ、欧州金融危機が勃発する。

3.アメリカ崩壊時の日本はソ連崩壊時の北朝鮮に類似
 1991年にソ連邦が崩壊し、ソ連穀物重油を依存していた北朝鮮は未曽有の危機に見舞われた。比較的寒い地域であるので農業の不向きであると、トラクターを動かす重油が不足して収穫量が減り、対策として食料を自給を高めるに山林を切り拓き畑作を推進したが、保水力が落て大洪水を招き食料事情は更に悪化した。2000年代になり食糧事情は比較的安定しているとのこと。北朝鮮は電力需要を満たすため小型の水力発電設備を増やして対応している。
 アメリカがデフォルトし、ドルによる貿易決済が停止する事態にもなれば、日本も食料・エネルギー自給率を引き上げざるを得なくなる。日本は小麦・大豆などの穀物アメリカに頼っており、石油調達もドル覇権に象徴されるパックスアメリカーナの庇護の元に成立している。一方、アザデカン油田の権益放棄にも見られるようにアメリカによる圧力によって日の丸石油の権益確保はうまくいってない。イラク・ナシリーヤ油田権益を得ることも出来なかった。

4.福島大災害の到来
 広瀬隆氏が著した全著作の7割程度は読破し、かつて浜岡原発前の反対デモに参加したこの私でさえ福島第一原発の事故を予期していなかった。今から思えば柏崎刈羽原発の事故は福島第一事故の予兆であった。私には的確な未来予測は出来なかった。原発技術論は難しく、真正面から向き合うには私は不適格だと自ら烙印を押していたことも原因である。
 ともあれ原発は終わりである。ひとたび事故が起きれば国土が失われ多くの国民が晩発性のガンや成人病の悪化、免疫低下による疾病増加によって落命する原子力発電は「ふくいち」大災害の発生により命脈が尽きた。
 かねてから原発推進プロパガンダの威力を前にして、庶民は成す術も無かった。我々は情報を鵜呑みにし安穏と過ごした月日によって、手ひどいしっぺ返しを受けることになった。

5.多勢の無勢の言論に価値が宿ることが証明される時
 福島大災害により広瀬隆氏やかつて熊取六人衆と呼ばれた小出裕章京都大学原子炉実験所助教は見事に復権した。私はそこに注目している。記念すべき「朝まで生テレビ」第一回は原発問題であり広瀬隆氏と関西電力の激しいバトルが繰り広げられた、その後にもう一度原発を取り上げたあと、なんと原発事故が起きるまでの27年もの間、朝生で原発は扱われなかった。原発問題は電気事業連合会マネーにより、マスメディアにおいて故意にネグレクトされていたと言われている。
 いわゆる日蔭者扱いされていた方々が、原発大事故が起き、一転し日の目を見て鮮やかに復権する事が起きた。

6.アメリカ金融デリバティブ崩壊の結末
 経済アナリストの藤原直哉氏によると、原発と金融デリバティブは制御できなくなる点や破綻時の影響の大きさ等で類似点があると主張している。先の金融恐慌は1929年の株価暴落に端を発し、実体経済の深刻な影響が出たのは5年後の1834年であった。株価も最安値となった。2008年の金融デリバティブ破綻で世界経済は影響を受けたが、コンピュター高周波取引や公的資金の買い上げでダウ平均は「人為的に」高値を維持している。一方、アメリカ工業指数や失業率、フードスタンプ受給者などの実体経済指数は悪化しつつある。
 実体経済を無視して株式が永遠に買い上げられることない。いずれ暴落の憂き目を見る。先の大恐慌に擬えれば2013年が大底ということになるが、今回の6京円とも8京円分とも言われる金融デリバティブ破綻収束に向けて、ドルの信任が揺らぐほどにFRB米国債MBSを買い上げた。つまり通貨価値が大幅に切り下がることが予見される程に事は深刻であり、先の大恐慌が霞むほどの経済混乱が起きる可能性はかなり高い。

7.サプライチェーン寸断と貿易収支の赤字
 日本工業力の砦は自動車製造において3万点の部品をマネージメントするミドルウェアの質の高さにあると言われている。しかし、コストカットや外形的に課税する税制によりメーカーが部品供給ルートを絞ったため震災の影響を強く受けることとなった。楽観的な見通しと悲観的な見通しが混在するが、放射能汚染の影響や輸入エネルギー資源の高騰から4月・5月と貿易収支赤字は増加の一途である。国際収支が重要であり、短期的な貿易収支赤字に目くじらたてるなという意見もあるが、円通貨価値の源泉は堅実なものつくりを基盤とした毎年10兆円にも及ぶ貿易収支の黒字計上にある。貿易収支の赤字が慢性化すれば、円価値は下がる。ましてや日本国の官民併せたドル建資産は800兆円と言われ、ドル暴落の暁には金融セクターも甚大な影響が見込まれる。

8.日本と北朝鮮の分断政策を推進するプロパガンダ
 私が今回最も主張したいのは、唐突ではあるが「北朝鮮敵視政策と原発安全神話創成の類似点」である。さすがの私も北朝鮮が優れた統治システムを持つ国家とは考えていない。しかし、完膚なきまでに貿易がゼロとなるほどに日本と北朝鮮が分断されるいわれも無いと考えている。菅政権は北朝鮮への制裁措置法案を1年延期した。哨戒艇天安の沈没や延坪島砲撃はマスメディアで報じられるのと、各分野の方々による分析に大きく食い違いがある。インターネットの存在により多方面から情報が入るので、昔のように国民を洗脳するのは不可能である。詳しい分析書として『朝鮮半島戦争の危機を読む ― 朝鮮を知り平和を創る 鎌倉孝夫氏 白峰社http://p.tl/GNQD』を挙げておく。日朝には拉致問題があり、北朝鮮が日本にとって危険な存在であったのは確かだ。だが、今は解決の道筋へ話し合いの段階にある。日本が採るべきは米韓軍事演習参加という準戦争行為ではなく、解決への糸口を探ることだろう。
 「昔、関東軍。今、電事連」と並び称される原発推進政策であるが、実際は自滅爆弾の設置と稼働であった。実際に自滅核爆弾は「稼働」した。いわゆる簡単に嘘と分かるプロパガンダなんだがやっぱり騙されてしまう、という点においては原発推進北朝鮮敵視は同根だ。

9.アメリカの掌で踊り、アメリカ破綻と同時に倒れる日本
 原発導入もプルサーマル計画も北朝鮮敵視政策もアメリカの意向である。アメリカによってGE製の原発自滅爆弾を据え付け爆発させられ、隣国とは戦争寸前まで対立するように仕組まれる。ちなみに福島第一原発1号機はGE製、ECCSはすべてGE製で緊急時の動作不良が指摘されていた。小泉政権下の2003年には電源喪失でも動く外付け式蒸気タービン循環式冷却装置を取り払った。
 ローマによってカルタゴは攻め滅ぼされ、作物が育たぬように塩を撒かれたが、日本はアメリカに800兆円も収奪され、揚げ句には放射能の海に沈もうとしている。しかも、アメリカはデフォルト時には日本からの借金を踏み倒すだろう。踏んだり蹴ったりとはこのことである。よって日本は常に独立を志向するべきなのである。特に小型水力発電・石炭気化発電・太陽電池によってエネルギー自給率を引き上げ、原発停止不足分の電力を賄うために天然ガスLNG発電設備を増強すべきである。そして、アメリカ以外の国と親密な関係を築き、アメリカ倒産以後の世界を生き抜く策を実行していくべきである。

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そこにCIAがいる (1971年) [古書] 松本政喜氏(著)
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