D-7系の再評価とコニカルホーンの復権

○評価の高いD-7&D-7mk2系
 長岡鉄男氏の「観音力」の自作スピーカーランキングの6位にD-7が入っております。
D-7系をまとめた票数でのランキングではあるものの、6位入賞について長岡先生は
「意外だった。エポックメイキングなモデルではないからだ。」
とコメントしております。
 私もD-7系はD-50系であるD-55/D-77の登場でその存在価値を失った、と考えておりました。
キャビネットの剛性を追求したD-55にくらべて、D-7は明らかに剛性は低いのです。

D-7mkIIIのモデリング 07/12/22
http://tzaudiocrafts.web.fc2.com/D7mkIII.htm

  • ↑から転載開始-

斜めの配置が多くてモデリングは大変だった。もうD-77があるのでこれを製作される方はいないと思うし、工作の難易度もかなり高いと思われる。しかもバッフルや側板が一枚だし、背面板にいたっては板の節約のためか途中で切れているので、エンクロージャとしての剛性がイマイチ低いように思われる。ただし、サブロク4枚で2本できるのだからCPはとても高い。EΣ系は丸い縁が当たるので取り付けられない。

  • 転載終わり-

 しかし、「観音力」6位入賞の実力に相応しく、私がさまざまな方から評価をうかがった限りにおいてもD-7系の評価は高いようです。長岡先生が母屋で長く使っていたということだけはないようです。
 D-3やD-7などの斜め板組み立ては難しく、歪んだりしたりするそうです。D-50から割り切って直管仕様にしたからこそ、マニアの間だけとはいえ普及したと言えるようです。

○空気室の形状と音質
 空気室はローパスフィルターとして機能するそうです。
 評価の高いD-55は空気室とスロートにユニットを支える補強板が入っています。これが空気室内部の定在波を押さえてるのではないかと思われます。
 ネッシー系も補強板が垂直に立っていますが、定在波対策だと思われます。
 SDM方式という十字の桟でスピーカーユニットを後から押さえるという手法があるのですが、ユニットの制震作用だけでなく、空気室内の定在波を押さえるという、両作用があるのではないかと思われます。
 『D-58ESは何故こんなに音が悪いのか』というWebPageがありまして、かつて何度も読み返したのですが、いまいち意味がよくわからなかったのですが、FE208ES-Rの登場や、あちこちでいろんなシステムで聴いたり、意見交換してみてここ最近になってようやっと意味がわかり始めています。
 『空気室を構成する側板部分の厚さが25mmになるまで削りました。5回に分けて削ったのですが,少し削るごとにキャビネット自体がエージングを要求するように感じられます。 』
どうやら、側板を削ったところ、痩せた音が
『沈み込むような深いチェロの音が十二分に聴こえ』
るようになったそうです。
結論に至った、”側板を削ったら良くなった”という因果関係はよくわかりませんが、推測すると剛性もほどほどの方が板が振動することによって力を逃がす作用があるということなのかもしれせん。
・・・などと通読したところいくつかインスパイアされる点がありました。

○D-7mkIIは音が良かった?
 先に述べたとおりD-7系までの音道の開口方式はコニカルワイドのカスケード接続です。それ以降はコンスタントワイド(直管)のカスケード接続になっています。
 私は肝心のD-7mkIIを聞いたことが無いので、なんとも言い難いのですが、D-7mkIIはFE-203Σ×2発だったので、振動板総面積としては大きく、低音の厚みもあったものと思われます。
  D-58ES+FE208ESは低音が薄く、D-55+FE208ESの組み合わせがベストマッチと言われています。D-58ES+FE208ESを使っていましたが、確かに低音が薄かったです。D-58ESはスロート断面積が振動板面積の1.1倍。D-55は0.9倍だったと思います。長岡鉄男先生自身が打ち出した公式を逸脱する数値で設計したのは、超オーバーダンピングユニットに対して低音のレベルを稼ごうとされたのだと思います。音道の長さが延びたので、低域の伸びはありますが、音圧レベルが低いです。
 ちなみに、D-58ESのスロートを途中まで少し狭く改造したものは音が良いそうです。(重要)

後日、D-55+FE208ESは試してみる予定です。

○チューバシリーズの登場
 TQWT方式というのがありまして、Tapered Quarter Wave-length Tubeの略で、日本語でいえば「テーパー付き1/4波長共振管」だそうです。
 バックロードホーン方式より低音が伸び中域がクリアです。空気室が無い共鳴管タイプなので背圧がバックロードホーン(BH)よりも低いようです。
 TQWT方式を用いたチューバベーシックというのがございまして、図面が雑誌に公開されています。添付の図に合わせたり、三角の棒を使って斜め板組み立ての工作難易度を下げています。
 ユニット装着部下の細長い三角室がミソだという話しです。
低域は伸びます。25Hzまでレスポンスがあるとかいう事です。BHとは明らかに違う音がします。BHはバスレスポートのつなぎ合わせ動作、ホーン動作、共鳴管的動作の複合体だと言われていますが、低音の鳴りはバスレフっぽい強調された出方をします。
 一方、チューバ系は共鳴管コニカルホーンが連続するスタイルなので、くせの無い素直な低音です。BHを聞き慣れていますと、100Hzあたりが薄いような気もしますが、周波数特性としてはフラットなのかもしれません。
 チューバ方式のキャビネットにFE138ES-Rを装着したものを聞く機会があったのですが、ものすごい超低域の伸びで、部屋全体がビリビリと振動していました。真空管アンプだとバランスの良いサウンドなのですが、アナログアンプだとハイ上がりに聞こえました。
 BHの定説では開口部の大きさの振動板ユニットと同じ能力の低音を得られる?といのがあったと思うのですが、開口部は小さくても床がホーンの延長として働くので問題無いのかもしれません。
 BHの音道長は3.2m程度に納め、TQWTでは超低域を狙わずに短めぐらいがベストかもしれません。
 スワン系BHはスロートが長いので低音の量感が得られていると思います。共鳴管動作要素が強いようです。
 チューバシリーズなどを観察していると、楽器のラッパよろしく、断面積の開口率は低いまま抑えた方がかえって良いのでしょう。

(参考)
D-58ESは何故こんなに音が悪いのか
http://www.nihonkai.com/tam/d58es/4.htm
唱わないキャビネットに存在価値はあるか
http://www.nihonkai.com/tam/d58es/6.htm