デッドエンパイア・ウォーキング


1.フィラデルフィア連銀製造業景況指数が-30.7
8月18日、フィラデルフィア連銀製造業景況指数(通称フィリー)は-30.7と発表があり、ダウ-500ドル下落、英仏-5%、独伊-6%と欧米で軒並み株式市場は値を下げた。
 市場は先に発表されるニューヨーク連銀製造業指数から読み取れる製造業景況が本当かどうかを、後に発表されるフィラデルフィア連銀指数で確認する。フィラデルフィア連銀の管轄地区は比較的ニューヨーク市に近く、大都市の景気動向に影響されやすく、雇用関連の先行指標としても重要視されているとのこと。
 -30.7は2008年9月のリーマンショック期並の悪化した指標である。マネーは株式市場から国債へ逃避した。

2.一度は死んだアメリカ経済
 リーマンショックで米国内では一時期、自動車用薄型鋼板取引が0になった。米経済は一度死んでしまったのだ。そこをフランケンシュタインよろしくマネーを注入して蘇生させた。大銀行を合併・株式買い上げ、公的資金注入救済し、市場の米国債、地方債、住宅公社債MBSCDSCDOFRBが買い上げた。既に価値が無いものまでも買い上げたので、保有している金融機関は会計上の損失計上を免れた。しかし延命処置でしかない。
 デトロイトは空工場が並ぶ惨澹たる状況になり、ゼネラル・モーターズクライスラーは国有化された。
 そこで、米政府は日本メーカーをいじめる作戦にでた。トヨタはリコール問題で米政府に糾弾された。結果的に米国製のブレーキペダルが原因だったようだ。トヨタは米ゼネラル・モーターズとの合弁工場だったNUMMI(工場)を引き払う予定だったが、カリフォルニア州に電気自動車ベンチャーのテスラー社を売りつけられ、NUMMIも存続させられた。
「テスラは2世代前の古い技術。トヨタ側がもらう技術はあるのか」
と言われている。
 
3.金融を揺るがす格付け会社の「格下げ砲」
 世界の基軸通貨はドルである。担保しているのは原油との兌換である。しかし、ロシアもイラクもイランもリビアベネズエラもドル覇権に挑戦している。恐ろしいことにイラクは潰されてしまった。
 米国の格付け会社は日本国債の格付けを下げた。ヨーロッパPIIGS各国国債の格付けも下げた。円とユーロを攻撃して、ドルからの資産逃避を抑止するのが狙いである。格付け会社の「格下げ」は至って政治的なメッセージである。
 クラウゼヴィッツの言うところの「戦争はそれ以外の手段を以ってする政治の延長である」を援用するまでもなく、「格下げ砲」で戦われる通貨戦争は政治と密接な関係にある。

4.帝国は既に死んでいる。
 米国債の本当の格付けはBBBである。Bが3つもあるなら良いじゃないか、と思われる向きもあろうが、トリプルBは通信簿で言うところの「2」であって、落第、赤点、ジャンク債である。ところが株式市場から流入したマネーが米国債長期金利を押し下げている。つまり米国債の価格が上昇している。
 一時期上昇したスイスフランが先日暴落した。『スイス金融市場の崩壊』が噂されている。UBSとクレディ・スイスの2大金融機関のデリバィテブ残高がスイスGDP比では巨額過ぎて、スイス中銀では対処しきれないと2008年の頃から言われていた。
 サーカー師の予言「資本主義の崩壊は花火のように一瞬にして爆発する」はスイスを前座として進行していくだろう。メインキャストは米国である。ユーロは通貨発行規律を守っているが、ドルは刷り散らかしの過程にある。信任の度合が全く違う。ドル崩落に日本も付き合わされる。バイデン副大統領は22日に来日し、政府首脳に因果を含めて帰っていくのだろう。
 本当に困った事なのだが、花火のように爆発するだけなら良いのだが、金融崩壊・通貨価値暴落は爆縮して実体経済も吸い込んで消滅させる。死せる米帝、生ける日本も道連れに、ということだ。