量的緩和の果てにある通貨価値喪失

 アベクロ緩和とも言われる日銀の大規模金融緩和だが、一時期は【月額7兆円】を超えていた。日銀の国債保有残高200兆円に達している模様だ。現在も月額7兆円で推移しているがようだが、日銀が引き受けた発行済み国債比率は2割を超え、FRB米国債引受比率をも凌駕している。もっとも、FRBMBSも引き受けているので、考えようによっては、質の悪い流動性を失った金融商品を買い込まざるをえない程、米国の金融市場の状態は悪いとも言える。

 日銀の緩和=カネを出すと、「オラのところにも回ってくる」と信じて疑わない脳天気な人も居るのだろうが、給与は増えずに、物価高で実質可処分所得が減少しただけである。日銀に口座がある金融機関は直接資金融通受けることが出来る。庶民は金融機関からカネを借りなければ、カネを得ることが出来ないが、借りたカネには利払いが発生する。利払以上に利潤を産む事ができれば良いが、成熟社会では難しいので、カネを借りる個人や法人が減っている。

 ガソリンや灯油の値段は高止まりしている。高止まりしている所へ4月から消費税率が引き上げになり、併せて温暖化対策税(1リットル0.25円)も上乗せになった。
 仮に中央銀行が公債を市中から買い受ける。その分、国債の受給が緩むので、財政に余裕ができ、そこで減税する、というのなら緩和の意味もあるのかもしれないが、どういうわけだが、増税を行い、後期高齢者医療費負担増、国民健康保険料増となっている。今回の消費増税分をすべて社会保障の財源とすると、政府は喧伝しているが、実際には福祉は削られている。

 このまま、日銀が国債を野放図に引受け続けると、中央銀行が財政を賄っているとみなされて、資本流出が発生して、通貨価値が低減する。通貨価値の低減は円建てで給与を貰い、資産を保有している庶民とっては、ますます輸入物価高により生活苦が進展する。

 ところが、円安を待望する人たちがいる。日本政府及び大手金融機関や大企業や超富裕層は一部の資産をドル建てにしている。円高になると、時価で価値が目減りする。円安になると資産価値が増えるのである。貸したお金の目減りを防ぐために、自国の通貨価値減少を待望するという本末転倒な話しになっている。
 円建てで生活している庶民にとってはいい迷惑なのだが、庶民も円安を喜ぶように仕向けられている。3手先ぐらい読めば、その結果どうなるのか分かりものだが、御用媒体情報を鵜呑みするだけで、何も考えない人たちが、量的緩和や円安を喜ぶという痴呆状態となっている。
 おおよそ日本の金融資産の内、650兆円分がドル建てになっていると言われている。財務省の外為特会などで保有している米国債は実質的には米国に対する供出金であり、売却も円転も不可能だと指摘されている。

 中央銀行の本義「物価の安定」にあるべきなのに、いつの間にかインフレ誘導するようになってしまった。日経新聞などの御用メディアは2%のインフレ誘導を錦の御旗にしている。すでに物価高は2%どころか、輸入に頼る燃料や一部のパソコンパーツや情報端末は2割高になっている。
 実際のところは、米帝様発の世界的な金融不安を鎮静化するために、超量的緩和させられ、中央銀行を「打ち出の小槌化」して、巨額の供出をさせられている事を、「異次元」と称しているだけである。

 10年経たず生活苦も異次元になる。東京オリンピック開催の2020年が節目だと噂されている。

(参考)
日本国民の預貯金650兆円が米国連邦政府の財政を支えてきたと知れ!
http://blogs.yahoo.co.jp/hisa_yamamot/32737476.html