我々は誰と闘っているのか?

 美味しんぼ騒動で気付かされたのは、何故か行政機関が文句を言ってくる、ということだ。
双葉町
環境省
福島県
大阪府
大阪市
経産省
首相官邸
の上記の行政機関が小学館に苦情を申し立てたとされる。
自民党は野党の頃は「鼻血が出た」といい、与党になると「鼻血は出てない」と言う。なぜかといえば、与党は内閣を構成し行政府の長を押さえる。すると各省庁を抑止するのではなくて、抑止される方になる。菅直人氏の「大臣」という本によく書いてある。与党は霞ヶ関の広報機関となっているのだ。
 被曝で「鼻血が出た」となると、放射能漏洩行為は東電に責任があるはずである。ところが東電は黙っており、苦情を言うのは行政機関となっている。なぜなら、原発事故と被曝拡大政策の責任は行政にあるからである。

 東電は確かに福島第一原発の運営事業者であるが、許認可は経済産業省原子力安全・保安院である。保安設備の増設は保安院の許可が無ければ出来ない。仮に事業主に設備設計の自由度があれば、東電は独自に保安設備を設置して、全電源喪失は発生しなかった可能性は高い。そもそも、原子炉耐用年数は当初30年を予定しており、稼働後30年で保安院廃炉を指示すれば、福島第一原発1号機から6号機まですべて廃炉作業に入っていたはずで、3・11当日には原子炉から燃料棒が抜き取られていた。
 福一1号機マーク?型原子炉基本設計はゼネラルエレクトリック社であり、2号機以後基礎設計はGEであるが、東芝・日立の設計である。施主はゼネコンであり、東電は「運転手」に過ぎない。言われたとおりに動かしていましが、地震津波で壊れました。「どうしようもありません撤退します」と、フクシマ・フィフティ状態になるのは当たり前である。原子力災害においては、防衛大臣命令で自衛隊法に基づき自衛隊が投入されるが、自衛隊放射能防護知識も設備も持っていなかった。極めて脆弱な原子力事故災害対応体制である。
 私は東電に責任がないとは言わない。原子炉を稼働させ、運用している経験から、不具合や危機の予測はある程度出来たはずである。経産省にねじ込んで、保安設備を増強することは可能であったと思われる。しかし、GEやメーカーや行政にがんじがらめになっている中で、カイゼンを提案するのは難しかった事は想像に難くない。最終的な責任は経産省にある。仮に「非常用電源を別途設けたい」と保安院に具申しようものなら、「お前はおれらが認可した保安設備状況に不満なのか?」と睨まれて、即座に担当者は閑職に飛ばされたと思われる。官僚機構は傲慢で融通が効かないのである。だから、日本政府に核燃政策遂行は無理なのである。他の国ならともかく、日本だけは絶対にダメなのである。地震大国であるとか、という観点よりも組織の論理が最優先される腐敗した日本政府だけには、絶対に無理なのだ。
 鉢呂大臣を飛ばした経産省である。大臣はお飾り程度にしか見ていなかっただろう。核燃の暗部は人命の損耗を前提としている所にある。定期点検で被曝し、事故を起こせばますます重度に被曝する。稼働中原子炉はトリチウムやクリプトンを放出し、環境を汚し、周辺住民の被曝を招く。その被曝の連鎖の極大化減少が原発事故であり、東日本全域で被曝者を産む惨状になっている。現下、被曝下に置かれている人は4700万人と言われている。疾病増大は事故後4年・5年後から顕著になる。2016年頃には東日本の産業が機能不全となる可能性は高い。

 福島第一原発収束作業に動員されている人員は高い線量の被曝を受け、除染作業に関わっている人達も同様に被曝している。高線量汚染地に居住している人達も被曝させられ、「食べて応援=被曝して集団自殺」に踊らされている愚民な方も被曝している。
 この国に今でも秩序はあるが、その秩序というのは被曝を前提とした秩序であって、乱暴な言い方をすると、人命損耗を促進する体制が国家運営を行っている。我々が税金払って運用を任せている行政組織は、我々に人命損耗を強要しているのである。核燃というのは本質的に被曝なくして運用はできないものであったが、事故が起きてしまえば、行政は行政責任を逃れるために広範囲かつ大多数に被曝を強要する。ヘレン・カルティゴット博士によれば、高濃度汚染地域の居住者を移住させる点においては、日本政府の対応はソ連よりも劣るということである。ビキニ環礁ロンゲラップ島に帰島した住民に被曝症状が多発した事例をソ連政府は知っていたので、汚染地域から移住させた住民を帰還させることはしなかった。しかし、日本政府は帰還政策を実施している。ソ連政府は除染を実施したが、無駄であるので止めた。日本政府はその無駄な除染に巨額の予算を付けて遂行している。
 単に日本政府がソ連政府よりも劣っているとみなすこともできるが、この対応の差は「責任逃れのために人民を被曝させている」ということである。憲法の理念は機能せず空文化している。
 行政に関わる仕事をしていると、この対応はよく分かる。彼らは「そのような人達」つまり、責任逃れのためにはなんでもやる人達なのである。民間企業ならそうはいかないのだが、行政はいかに責任をとらないか、という観点で行動している。
 その結果、何が起きるかといえば、数多の人民が疾病に苦しみ死んでいくということである。人民を意図的に死に追いやる行政は存在してはならないのだが、これに抗うのは不可能である。一番重要なのは自分が生き残ることである。巨大な国家級オウム真理教団となっている霞ヶ関の暴虐はいつ果てること無く続くだろう。「ああ言えば上祐」という言葉があったが「ああ表現すれば行政(が文句を言う)」という惨状である。
すでに病院では長時間待たされる状態となっているそうだ。であるから、病院に行くような事態になった時点で、かなりの時間的損耗が発生する。病院にいかないで済むように健康維持に腐心しなくてはならない。動物性の食べ物を避けて、植物性で産地を選んだ食品を食べ、あらゆる健康を維持する方法をお金をかけずに工夫しながら生きていかなければならない。
 すでに言論弾圧も起きている。「福島のエートス」主催者安東量子を中曽根康弘と比して批判したら、侮辱罪で刑事告訴され警察や検察の捜査を受けているジャーナリストもいる。弾圧を受けているのは美味しんぼだけではない。
 みのもんた氏は福島第一原発に幾度も足を運んだようだが、4号機燃料プールを見に行って、現場を確認するとラジオで発言したら、御用媒体から葬られた。
 露骨な弾圧は石井紘基衆議院議員に対する刺殺事件である。石井議員は珠洲原発用地取得に関する問題を国会で質問しようとした日に、自宅前で刺殺された。公用車の運行情報が漏洩していたと指摘されており、単に裏社会の都合だけでの事件とは思えない節がある。
 
 もう放射能をまき散らしたくてしょうがない人達が霞ヶ関にいるとしか思えない。背後には米帝の威光があるにせよ、曲がりなりにも日本は独立国家のはずなのだから、人民を守るとまではいかなくても、「人民を減らさないで国力を維持する」ことを前提に施策を執り行わなくてはならないはずだ。
 仮に米帝様がドル暴落で衰退しても、日本国内に巣食った核燃の暗部は、悪業の深さ故に、人民に対する加虐行為を止めないだろう。

(参考)
東大教授が語る「『美味しんぼ』は間違っていない 〜風評被害論が孕む暴力性〜」安冨歩・博士にインタビュー
http://www.france10.tv/social/2550/