内部被曝問題

内部被曝問題

1.電離放射線による生体作用
 人類は体内の安定した内部環境の下で体温を36℃何分に保ち、心臓が一定のリズムを刻む仕組みを作り上げてきた。内分泌系、自律神経系、免疫系の3つが協力しながら、内部環境を良い状態保っている。
 
 アルファ線ベータ線はDNAの鎖を2本同時に切断する。すると異常再結合が起きる場合がある。切断が密に行われるほど、危険度が高い。密に行われると、すぐ近くに切断されたものが複数あるため、修復時に繋ぎ間違えてしまう。これをDNAが変成されるという。人の体の中では40回も50回も変成が繰り返されて、ガンになると言われている。
 強い免疫機能があれば、傷ついた細胞を識別し、それを取り除いてしまう。免疫機能が弱いとそれを判別できなかったり、取り除く力がなくなる。
 染色体が破壊されたまま細胞が増殖する。骨髄で起きると、造血幹細胞の遺伝子に突然変異が起きて増殖し白血病になる。脳腫瘍では、症状がでるまで30年近くかかる。

 バイスタンダー効果により、放射線を直接照射された細胞だけでなく、その周囲の直接照射されていない細胞(バイスタンダー細胞)にも放射線を照射された影響がみられる。 これにより細胞核の中にあるDNAに傷がつかなくても、近く、或いは隣の細胞に放射線がヒットしても、生物化学的反応が起こってDNAに傷がつく。
 修復の過程で生まれた異常な再結合、その形質が次々に受け継がれていく。その結果、ガン或いは先天障害とか免疫異常とか様々な病気を生みだしてくる。遺伝子の不安定性、ミニサテライト突然変異により、障害が受け継がれていく。

 細胞を傷つけない程度の低線量の方がDNAの損傷による発癌性は高いとの、『ペトカウ効果』というものがある。
1972年アブラム・ペトカウは
「長時間、低線量放射線を照射する方が、高線量放射線を瞬間放射するよりたやすく細胞膜を破壊する」
ということを実証研究した。
 外部被曝35Svで起きる細胞膜破壊が内部被曝7mSvで起きた。線量を単純に計算すれば、内部被曝外部被曝の5000倍も影響力が高いと言える。

 ICRPがいう年間被曝許容量1mSvという量は、人間の体にある80兆位の細胞のひとつひとつに1個ずつ、分子切断を与える。1mSvで十分発がんの確率があって、人を死に至らせる可能性がある。
 ちなみに、1mSv/年とは外部線量と吸引する放射能の半々の合算値であり、1mSv/年を8760時間で割ると1.14μSv/hとなる。空間線量の許容量はその半分の0.57Sv/hである。
 総じて、内部被曝外部被曝の600倍か ら900倍の影響があると言われている。


2.隠された内部被曝
 連合国総司令部による言論統制政策(プレスコード)を受けた報道機関が、『被爆者の病気すらもアメリカの軍事機密』として原爆に関する報道の一切を禁じられ、報道をすれば「発禁処分」となった。言論統制は7年間にも及んだ。
 占領軍は日本の医学界や医師が放射線や被曝影響を論文に記したり研究すること一切を禁じた。これに違反するものは、占領軍として重罪に処すとされた。併せて、米国により原爆症患者は「爆心から1.8km以内」「爆発から1分以内」に被爆したものに限ると厳命された。
 1957年日本政府が原爆医療法を定めたが、被曝者の認定基準を米国に従って作ったため、実際に生身で被曝を受けた、放射線の被害を受けた人達が切り捨てられた。

 1950年に内部被曝委員会(第二委員会)が設立されたが、2年も経たずに閉鎖された。 カール・ジーグラーモーガン委員長によれば
原発労働者の健康維持、これを考えた時に内部被曝を考慮できず、原子力産業を維持できないことが分かってしまった。内部被曝委員会は原子力産業から独立しておらず、内部被曝の検討を、これ以上やらないことにしよう、ということでもって閉じてしまった」

 日本では一般的に原発作業員は定期的にホールボディカウンターで内部被曝測定をするがガンマ線しか測定出来ず、にアルファ線ベータ線が放射されても測定できない。外部被曝は被曝手帳に記載され、賃金に反映されるが、内部被曝は手帳に記載されない。
 内部被曝隠蔽は核兵器の非人道性を隠すためと言われている。もう一つの理由として、原発作業者の内部被曝が露見すれば、原発産業自体が立ち行かなくなる、との観点がある。原子力産業は「原子力の平和利用」の美名の元に人的犠牲を強いてきた。

 原発の通常運転でも様々な形の有害な放射性物質が環境に出ていて、それによって昆虫や植物とかにも障害が出てくる。また、近くに住んでるで5?圏内、或いは原発から50?圏内に住んでいる人たちの健康障害の問題もある。子供の白血病の発病率が高い

 LEUREN MORET氏のThe Radiation and Public Health Project(放射線と市民の健康プロジェクト)によると、アメリカにおける小児の歯中のストロンチウム90含有量と原子力発電所年間稼働率上昇とともに直線的に増加を示している。


3.人工放射能の問題
 埼玉大学名誉教授市川定夫氏によると、人工放射能は人体に蓄積するとする。天然の放射性物質であるカリウムは人体に排出する機能がある。カリウムに近いセシウムは人体に蓄積する。
 元ゴメリ医大学長、ユーリ・バンダジェフスキー博士によると、セシウム137の体内における慢性被曝により、細胞の発育と活力プロセスがゆがめられ、体内器官(心臓、肝臓、腎臓)の不調の原因になる。大抵いくつかの器官が同時に放射線の毒作用を受け、代謝機能不全を引き起こす。平均40-60Bq/kgのセシウムは、心筋の微細な構造変化をもたらすことができ、全細胞の10-40%が代謝不全となり、規則的収縮ができなくなる、と指摘している。

 矢ヶ崎克馬博士によると、天然のウラン238は原子が一個一個バラバラに存在する。40ミクロンに比べて物凄い離れた所同士に発射する場所があるから、 分子切断の場所が、相互作用をしない。
 人工的な放射性物質は必ずパーティクル、微粒子になる。例えば、1μmの直径の微粒子の中に約1兆個の原子がある。100万個の100万倍。これが体内に入った場合は、ひとつの場所から次々とアルファ線が放出され、塊になった放射性物質内部被曝するという事は、 極めて確率の高い発がん様式になってしまう。

 福島第一原発事故は人間だけではなく、植物も動物も全部同じように種の保全という事に関して、また種の多様性を保持するという事に関して、非常に大きな打撃を受ける事になる。



参考書籍
内部被曝 岩波ブックレット 矢ヶ崎克馬 守田敏也 2012
IWJ 矢ケ崎克馬琉球大名誉教授インタビュー 1/8