原子力発電が内包する不経済と不道徳

不道徳部分草稿、図版省略
核兵器及び原子力発電に関する年表
1942年 マンハッタン計画開始
1945年 8月6日 広島原爆投下(ウラン型)
8月9日 長崎原爆投下(プルトニウム型)被害の全貌を把握するのに、わずか3日では不可能である。並列して2つの原爆計画が遂行され、日本への異なる2つの原爆投下は決定事項だった。
連合国総司令部による言論統制政策(プレスコード)を受けた報道機関が、『被爆者の病気すらもアメリカの軍事機密』として原爆に関する報道の一切を禁じられ、言論統制は7年間にも及んだ。
1950年 国際放射線防護委員会(ICRP)内部被曝委員会(第二委員会)が設立されたが、2年も経たずに閉鎖された。 ICRPは「放射能の危険性を隠蔽する組織」へと変質し始めた。
1954年3月1日 ビキニ環礁で水爆実験、第五福竜丸被曝
1955年 高速増殖炉「実験炉EBRI」核暴走による炉心溶融事故
1957年 日本政府が原爆医療法を定めたが、被曝者の認定基準を米国に従って作ったため、実際に生身で被曝を受けた、放射線の被害を受けた人達が切り捨てられた。
同年9月29日 ソ連ウラル・マヤーク核技術施設で爆発事故発生
1966年10月5日  エンリコ・フェルミ高速増殖炉 炉心溶融事故発生
1977年9月1日 日米再処理交渉合意 カーター大統領は日本に再処理中止を求めたが、受け入れられず。当時の日本政財界は原子力に関する技術開発意欲が高かった。
1979年3月28日 スリーマイル島原子力発電所事故
1984年 米国 高速増殖炉研究中止決定
1986年4月26日 チェルノブイリ原子力発電所事故
1989年 米ハンフォード再処理工場閉鎖
1992年 米アイダホ再処理工場閉鎖
1995年12月8日  高速増殖炉もんじゅナトリウム漏洩事故
1997年 仏ガブリ試験炉プルサーマル実験中、燃料棒破損事故 プルサーマル縮小へ
1998年 米サバンナリバー再処理工場閉鎖 米国における全再処理工場閉鎖
1999年 9月14日 英BNFL社MOX燃料寸法データ改ざん発覚
9月30日 JCO臨界事故
2003年2月17日 原子力安全委員会福島第一原発2〜6号機の蒸気凝縮系機能冷却システムを削除する決定」
蒸気凝縮系機能冷却システムは圧力容器上下の温度差を利用し、蒸発する冷却水を供給し続ける限り、そしてバルブを作動させる電源が生きている限り、原子炉(圧力容器)を永久に冷やし続けることができるとされる。
浜岡原発でU字管に水素が溜まり爆発する事故が発生し、他の原発において撤去された。しかし、槌田敦博士によれば、水素逃し弁をつければ対応できたはずだと指摘。
2006年3月31日  六ケ所村再処理工場アクティブ試験開始 トラブルのため20回延長中
10月23日 MOX燃料装荷に反対していた佐藤栄佐久福島県知事収賄罪で逮捕
経産省と東電が連携してMOX燃料使用許可を福島県に要請。これに佐藤県知事が安全基準を満たさないとして反対。東京地検特捜部が収賄金額0円の収賄容疑で起訴し、マスコミが連携して人物印象破壊を行い、知事を失脚させて排除した。
2007年7月16日 新潟県中越沖地震発生
 柏崎刈羽原子力発電所 3号機タービン建屋1階で2058ガルを計測
2009年5月23日 玄海原発MOX燃料搬入
10月15日 玄海原発3号機MOX燃料装荷運転開始 2010年12月に停止
2010年2月12日 伊方原発3号機MOX燃料装荷
7月 第一原子力発電所福島第二原子力発電所免震重要棟、運用開始
10月26日 福島第一原発3号機MOX燃料装荷営業運転開始
澤田哲生東京工業大助教
「3号機は炉心の中に燃料集合体が数百本(548体/94t)あるが、その3分の1(240体)にMOX燃料というプルサーマルを最初から混ぜたものを使っている。」
東京電力発表では32体を装荷と発表。わずか半年後には過酷事故を引き起こした。
2011年3月11日 14:46 東日本大地震発災 マグニチュード8.4M(Mj日本基準)
14:52 1号機「非常用復水器(IC)」手動停止。停止するまでの11分の間に原子炉内圧力・水位急低下。
保安院解析結果では1号機の原子炉系配管に事故時、地震の揺れによって〇・三平方センチの亀裂が入った可能性を指摘。
地震によって発生した津波女川原発福島第一原発福島第二原発、東海第二原発の14基を襲った。
19:00福島第一原発1号機水位低下
19:00頃 電源車が次々に到着したが、海水をかぶった機器に電気を通すのは危険だとして一台も使われなかった
同日 東電関係者証言 1号機原子炉建屋内 300mSv/hを検出
(私は圧力容器を下で支えるスカート部は3-4cmの厚みしかない。これで数千トンの圧力容器を支えている。これが地震により破損し、格納容器から圧力容器へ貫通している配管が損傷し、数時間かけて圧力容器内の水や圧力が抜けたと推測する。)
3月12日 15:36  1号機建屋水素爆発 給水作業に障害
3月14日 空母ロナルド・レーガン福島第一原発から北東約185kmの洋上に展開していたが、他の艦船群とともに福島第一原発風下から逃れた。
0:10 保安院:1号機の格納容器内への海水注入を一時中断。
1:10 保安院:1号機および3号機の注入を汲み上げ箇所の海水が少なくなったため停止。
3:20  保安院:3号機の海水注入を再開。
4:24 保安院福島第一原子力発電所にて原子力災害対策特別措置法第15条通報」
6:10 官邸:3号機で格納容器圧力が460kPa(設計上の最高使用圧力:472kPa)程度まで上昇
6:50 2号機の格納容器圧力が上昇
7:44 官邸:2号機の状況を15条事象「格納容器圧力異常上昇」と判断
7:55 官邸:3号機について15条通報(冷却機能喪失)
11:01 3号機燃料プールで爆発
【3号機燃料プール核爆発経緯】
全交流電源喪失にて、燃料プール冷却用ポンプが停止。プール冷却水沸騰、蒸発が継続した。プール水位が低下。燃料集合体がプール水面上に露出。ジルカロイ水反応で水素発生。同時に燃料ペレットが積み木崩し状態でプール下部に落下。
プール下部で燃料ペレットが大量に集合した状態となった。
建屋内で水素爆発。その圧力が、水面から水中に伝達。プール内ボイド(水中の泡)が消滅。中性子線減速作用により、即発臨界状態に移行。
瞬間的にオレンジの火球(3000度程度)が発生、プール内底部の水が熱に反応して水蒸気爆発。
爆発映像には3回の爆発音がある。1回目は水素爆発音、2回目は即発臨界音、3回目は水蒸気爆発音。
この爆発により、注水活動にあたっていた消防車やホースが破損する
11:01 官邸:2号機建屋パネル開放(水素滞留対応):3号機の爆発と同時刻、会議録では爆発で開放。
13:25 2号機原子炉隔離時冷却系の機能が喪失する可能性があるため、東電は原子炉冷却機能喪失と判断、15条事象と認識。官邸:15条通報。
16:34 官邸:2号機原子炉に海水注入を開始
16:18 4号機燃料プール約85度まで上昇
18:22 官邸:2号機は原子炉水位が−3700mmに達し、燃料全体が露出。
19:53 2号機SR弁開(2回目)1台目開、2台目準備中。原子炉内圧力を追加で減圧
20:05 2号機 海水ポンプ再起動
20:56  陸上自衛隊、2号機が危険な状態のため、全員オフサイトセンターから郡山駐屯地へ移動
22:14  東電は2号機の炉心損傷評価を行い「5%以下」と判断
22:50  2号機の原子炉水位が低下傾向。官邸:2号機が「格納容器圧力異常上昇」で15条事象発生と判断
23:39  官邸:2号機について15条通報
3月15日
0:02 2号機で水を通さないドライベントを数分間実施。
6:14 福島第1原発4号機 爆発音、壁の一部損壊
6:56 4号機に関し、建屋の上が変形した模様
7時頃 監視作業に必要な要員を除き、福島第二へ撤退することを官庁へ連絡
7:55 4号機の原子炉建屋5階付近にて損傷を発見したことを官庁等に連絡
8:11 4号機の原子炉建屋に損傷を確認、正門付近で807μSv/hを計測
9:25 正門付近で、これまでで最高の11.93ミリシーベルト/時のガンマ線を検出
9:38 4号機3階北西部付近出火の確認。
10:01 4号機の消火について経済産業省から米軍に依頼
10:21 4号機原子炉建屋北西には原子炉再循環電動機駆動装置が設置されている。米軍及び自衛隊による消火活動が行われる予定。
10:22 3号機周辺で400mSv/h
11:00 4号機原子炉建屋については見た目上は鎮火
11:31 火災は見た目上は鎮火、近くに油があるので油火災が起きる可能性は否定できない
12:29 米軍と自衛隊により鎮火を確認(中に入れないので外からの確認)
18時頃 外壁が落下し、壁に8m 四方の穴を2つ発見
3月16日
この日、米NRCは4号機燃料プールを対応優先順1位としている。
5:45 福島第1原発4号機 再び火災〜自然鎮火
6:20 消防に通報
8:14 消防車4台、隊員17人が到着
3月18日 3号機格納容器内放射線量が54.4Sv/hから105Sv/hまで急増(再臨界の可能性)
3月19日 3号機に対し放水実施(約20分間、放水約60t)
3号機対し2回目の放水実施(約14時間、放水約2430t)
21:50 3号機の原子炉圧力0.088Mpa(ベントの可能性)
3月20日
消防庁長官から、新潟市消防局及び浜松市消防局の大型除染システム部隊の緊急消防援助隊としての派遣を要請
海江田経産相現場職員に対し「言う通りやらないと処分する」
4:30 3号機の原子炉圧力0.180Mpaへ急上昇 格納容器圧力は0.290Mpa
8:00 3号機に関し、炉内の温度が三百数十度になっており、炉圧が高くなっている。(原子炉の通常運転中は280-290℃)
8:20 4号機に関し、自衛隊の消防車(10台)により放水(約81t)(〜09:29)
11:30 首相官邸ホームページ掲載「東北、関東の方へ 雨が降っても健康に影響はありません」
14:30 3号機原子炉格納容器内が高めで推移していることから注視。
15:00 事務本館北の放射線レベル 2.5mSvから3.3mSvへ急増
15:55 3号機 煙が噴出
16:00 3号機原子炉圧力 0.119Mpa 格納容器圧力:0.162MPaへ低下 南相馬市で高線量を検出
3号機で高レベルの放射能漏れがあったと推定される。
現場水たまり、通常の冷却水の1万倍濃度の放射能を検出。
21:30 3号機に関し、緊急消防援助隊東京消防庁ハイパーレスキュー隊)の消防車による連続放水(約1、137トン 約6時間30分)を実施(-21日03:58)
※この値は、他号機の80-90トンに比べて突出して高い。
3月21日 
緊急消防援助隊東京消防庁及び大阪市消防局)が放水活動のため、発電所まで出動したが、2・3号機の発煙により活動中止、20km退避
1:25 原子炉圧力 8.968MPa
1:45 原子炉圧力 11.571MPa
2:30 原子炉圧力 10.774MPa
3:58 3号機に対する放水終了
4:00  3号機 格納容器圧力: 0.160MPa 原子炉圧力 0.2MPa  ※放水終了直後に測定
圧力容器・格納容器が破損して、蒸気などが漏れ出したと見られる。
12:15 3号機の炉内の圧力低下
13:10 米原子力空母ジョージ・ワシントンが退避のため米海軍横須賀基地を出港
14:30 放水口付近、高濃度の放射性物質が検出
15:55  3号機に関し、灰色の煙が噴出(作業をいったん中断して、作業員全員退避)
再臨界もしくは放射壊変熱によるものと推測)
16:49 3号機の煙に関し、煙量に変更はないが、灰色から白色に変化 
16:50 本館北 508μSv/h。
18:02 3号機に煙に関し、沈静化を確認  
18:22 2号機フロアパネルから蒸気噴出
18:30 環境モニタリング 正門 1933μSv/h。短時間に四倍増。
3月21日に関東地方を襲ったフォールアウトは、大気圏核実験が全盛期だった過去50年間の同地域の総量に匹敵する莫大なものであった。
3月22日
3号機に対し東京消防庁に続き大阪市消防局が放水実施。その後、横浜市消防局、川崎市消防局などが連続して放水実施
7:30 正門 262μSv/hまで下がった
15日から不在だった保安院職員7人の内、2人が福島第一原発免震棟に戻る。
3月24日 水蒸気のようなものが発生
3月25日 水蒸気のようなものが発生

福島第一原子力発電所の正門において測定した放射線量:東京電力
10月12日 米バイデン副大統領 仙台空港来日演説
2012年8月15日 『第3次アーミテージレポート』
「東京とワシントンは、フクシマからの広範な経験を生かしながら、この分野で同盟関係を活性化し、安全な原子炉の設計と健全な規制業務の普及を世界的に促進することにおいて指導的役割を再び演じる必要がある。」
9月、野田民主党政権「2030年代に原発稼動をゼロ、高速増殖炉もんじゅは実用化断念」との閣議決定の意向を示すと欧米、相次ぎ懸念を表明
9月13日 エネルギー省のポネマン副長官が、原発ゼロを目指す日本政府の方針について、
「重要かつ深い結果をアメリカにももたらすことになる」と、懸念を示した。
10月26日 リチャード・アーミテージ元米国務副長官とハーバード大ジョセフ・ナイ教授は野田佳彦政権が打ち出した2030年代に原発稼働ゼロを目指す方針について「受け入れがたい」と強調した。
2014年1月26日 米、日本政府に対し茨城県東海村の高速炉臨界実験装置(FCA)で使う核燃料用の約300キロのプルトニウム返還を要求。高速増殖炉もんじゅプルトニウム濃度を高める予定だったとされる。
2018年8月 日米原子力協定(核燃サイクル協定)30年期限到来

■4号機爆発炎上事故についての考察
3月13日の東電会議映像では、4号機DSピットのプールゲートは閉じており、仮設のエンジンで、DSピット及び原子炉ウェルの水を燃料プールへ移水の指示がでている。
公式発表ではプールゲートが破損して、DSピットの水が燃料プールへ流れこんで4号機は助かったとされているが、建屋外見を見ても健全とは言えない。
3月15日NHK取材に対する京大原子炉実験所今中哲二助教証言によると4号機使用済み燃料の爆発でチェルノブイリを超える事故となったと証言。
たくき・よしみつ氏の著書、『裸のフクシマ 原発30km圏内で暮らす』 (講談社 2011年)の43頁に、以下のような注目すべき、作業員の証言が記されている。
「4号機は一番ミステリアスで、特に大きな爆発音もなかったのに、見ている前で建屋の外壁が映画のSFXのモーフィングのようにみるみる変形し、結果的には側面がぐちゃぐちゃに壊れたという」
北海道大学市川恒樹氏論文によると
『本邦の骨材中の主要成分をなす水晶や斜長石はアルカリ反応性鉱物ではないが,放射線を照射すると反応性鉱物に変化する。特に斜長石は100MGy程度の比較的低線量の放射線で非晶質化し,アルカリ反応性となる。これらの結果は,原子炉炉心を取り囲むコンクリート構造物は,放射線促進アルカリ骨材反応による損傷を受ける可能性があることを示唆している。』
(考察)4号機建屋内部に高線量を持続的に放つ放射線源が存在し、側壁を剥落させたと推測される。
4号機燃料収束体数
3月15日報道   783本
4月下旬報道    1331本
東電・政府公式見解 1535本(最終)
燃料プール最大許容本数 1590本 97%の装荷率
米NRC資料では「1,331本の使用済み核燃料を保管するプール」と記載されている。
事故当時、GE-日立による改修工事中であったため、新燃料204体のキャスクが屋上階に残置されていて、使用済み燃料プールの火災で放出された中性子が、新燃料と反応を引き起こし、溶融した核燃料が、コンクリートを溶かしながら貫通した、という推論がある。
福島第一原発事故後、米NRCヤツコ委員長は燃料プールに対する電源の三重のフェールセーフ体制を求めるも、辞任に追い込まれている。
GE側の設計思想にも欠点がある。経済性を優先する余り、燃料棒装荷作業効率維持のために、地上30mもの高い位置に燃料プールを設置した。これにより、事故対応が難しくなった面もある。
GEは非常用電源をタービン建屋地下1Fに二機とも設置させた。米国では竜巻による被害確率が高いためとし、日本側の事情を考慮せず、設計変更を認めなかった。
Fukushima : The Story of a Nuclear Disaster(福島:原子力災害物語)による現場描写
○3号機の90メートル上空の線量は、毎時3.75シーベルトだった。
○原子炉近くまで消防車を移動した作業員は、わずか2分間に、100ミリシーベルト(毎時3シーベルト)の放射線を受けた。

■2011年3月20-21日3号機原子炉からの放射能放出に関する考察
「福島事故による放射能放出量はチェルノブイリの2倍以上」(山田耕作氏・渡辺悦司氏)という論文がある。ところが、プルトニウムなどの核種についての放出量がかなり低く見積もられている。

フェアウインズのアーニーガンダーセン博士は茨城県や愛知県名古屋の一般家庭の掃除機ゴミパックからホットパーティクルを発見し、茨城県のものは粒が丸くほぼ核燃料100%の粒だと指摘している。
 金沢大学・環日本海域環境研究センター山本政儀氏は「南相馬の黒い粉」や「いわき市の野ざらしの鉄板」から微量のプルトニウムを検出している。Pu238/Pu239,240放射能比は0.03程度であり、福島第一原発由来であると断定している。
東京都東部にある葛飾区と江戸川区でも黒い粉の報告ある。江東区に近い江戸川区、2.374μSv/hとの報告である。右写真のような感じで町中に存在しているとのことである。
2011年3月20-21日に3号機圧力容器設計圧力を大幅に超える圧力が記録され、また格納容器内の爆発的事象によって圧力容器・格納容器とも大破したと推定される。
3号機には一部仏アレバ社のMOX燃料が使われていた。
MOX燃料とは(Mixed OXide)の略であり、ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料が正式名称である。『使用済み燃料中に1%程度含まれるプルトニウムを再処理により取り出し、二酸化プルトニウム(PuO2)と二酸化ウラン(UO2)とを混ぜてプルトニウム濃度を4〜13%(最大)に高めたもの』である。対人毒性は少なくともウラン燃料の5倍はあるとされる。
ウラン燃料・MOX燃料放出放射能比較ではα線15万倍、中性子線1万倍、γ線20倍となる。
ウランに比べてプルトニウム中性子線を吸収しやすく、核分裂しやすい。MOXの使用はまた、重大事故の発生の確率を大きくする可能性もある。MOX燃料の熱電導率は、ウランの場合よりも約10%小さくなっている。一方、MOX燃料の中心線の温度は、50%高くなっている。3号機で計測された異常高温とも符号する。高い温度になるので、MOX燃料を処分場まで運び出せる状態になるまで500年必要だと言われている。
ちなみに、使用済みウラン燃料の使用直後の外部線量は10万Sv/hとなり、未使用燃料の1億倍の線量を発する。1年で1000Sv/hまで低下する。
ゴードン・エドワーズ博士によれば
「ホットパーティクルが、いったん環境に散らばってしまえば、何世紀にも亘って、放射線被曝と環境汚染をもたらすことになるでしょう。脳が放射線を浴びると急性脳症を引き起こし、眠気、吐き気、嘔吐、頭痛といった神経症状につながる。錯乱を起こすこともあり、脳に水がたまって脳浮腫となる恐れもある。」と指摘。
 MOX燃料によって、過酷事故が起きやすくなり、放出された核燃料の対人毒性も高くなる。このMOX燃料が溶融したものを含んだ放射能雲が3月21日に放出され、降雨によって千葉県柏・松戸、東京東葛地域周辺に沈着した。ウラン及びプルトニウムアメリシウムキュリウムなどのアクチノイド系の核物質放出について意図的に隠されている。だとすると、超ウラン物質の偶数番同位体は自発核分裂をするため中性子線による被曝も考慮しなくてはならない。

内部被曝問題
1.電離放射線による生体作用
 人類は体内の安定した内部環境の下で体温を36℃何分に保ち、心臓が一定のリズムを刻む仕組みを作り上げてきた。内分泌系、自律神経系、免疫系の3つが協力しながら、内部環境を良い状態保っている。
 アルファ線ベータ線はDNAの鎖を2本同時に切断する。すると異常再結合が起きる場合がある。切断が密に行われるほど、危険度が高い。密に行われると、すぐ近くに切断されたものが複数あるため、修復時に繋ぎ間違えてしまう。これをDNAが変成されるという。人の体の中では40回も50回も変成が繰り返されて、ガンになると言われている。
 強い免疫機能があれば、傷ついた細胞を識別し、それを取り除いてしまう。免疫機能が弱いとそれを判別できなくなり、取り除く力がなくなる。
 染色体が破壊されたまま細胞が増殖する。骨髄で起きると、造血幹細胞の遺伝子に突然変異が起きて増殖し白血病になる。脳腫瘍では、症状がでるまで30年近くかかる。
 バイスタンダー効果により、放射線を直接照射された細胞だけでなく、その周囲の直接照射されていない細胞(バイスタンダー細胞)にも放射線を照射された影響がみられる。 これにより細胞核の中にあるDNAに傷がつかなくても、近く、或いは隣の細胞に放射線がヒットしても、生物化学的反応が起こってDNAに傷がつく。
 修復の過程で生まれた異常な再結合、その形質が次々に受け継がれていく。その結果、ガン或いは先天障害とか免疫異常とか様々な病気を生みだしてくる。遺伝子の不安定性、ミニサテライト突然変異により、障害が受け継がれていく。
 細胞を傷つけない程度の低線量の方がDNAの損傷による発癌性は高いとの、『ペトカウ効果』というものがある。
1972年アブラム・ペトカウは
「長時間、低線量放射線を照射する方が、高線量放射線を瞬間放射するよりたやすく細胞膜を破壊する」
ということを実証研究した。
 外部被曝35Svで起きる細胞膜破壊が内部被曝7mSvで起きた。線量を単純に計算すれば、内部被曝外部被曝の5000倍も影響力が高いと言える。総じて、内部被曝外部被曝の600倍か ら900倍の影響があると言われている。
 ICRPが主張する年間被曝許容量1mSvという量は、人間の体にある80兆位の細胞のひとつひとつに1個ずつ、分子切断を与える。1mSvで十分発がんの確率が上がり、人を死に至らせる可能性がある。
 ちなみに、1mSv/年とは外部線量と吸引する放射能の半々の合算値であり、1mSv/年を8760時間で割ると1.14μSv/hとなる。空間線量の許容量はその半分の0.57Sv/hである。

2.隠された内部被曝
 連合国総司令部による言論統制政策(プレスコード)を受けた報道機関が、『被爆者の病気すらもアメリカの軍事機密』として原爆に関する報道の一切を禁じられ、報道をすれば「発禁処分」となった。言論統制は7年間にも及んだ。
 占領軍は日本の医学界や医師が放射線や被曝影響を論文に記し研究すること一切を禁じた。これに違反するものは、占領軍として重罪に処すとされた。併せて、米国により原爆症患者は「爆心から1.8km以内」「爆発から1分以内」に被爆したものに限ると厳命された。
 1950年に内部被曝委員会(第二委員会)が設立されたが、2年も経たずに閉鎖された。 カール・ジーグラーモーガン委員長によれば
原発労働者の健康維持、これを考えた時に内部被曝を考慮できず、原子力産業を維持できないことが分かってしまった。内部被曝委員会は原子力産業から独立しておらず、内部被曝の検討を、これ以上やらないことにしよう、ということでもって閉じてしまった」
 1957年日本政府が原爆医療法を定めたが、被曝者の認定基準を米国に従って作ったため、実際に生身で被曝を受けた、放射線の被害を受けた人達が切り捨てられた。
 日本では一般的に原発作業員は定期的にホールボディカウンターで内部被曝測定をするがガンマ線しか測定出来ず、にアルファ線ベータ線が放射されても測定できない。外部被曝は被曝手帳に記載され、賃金に反映されるが、内部被曝は被曝手帳に記載されない。
 内部被曝隠蔽は核兵器の非人道性を隠すためと言われている。もう一つの理由として、原発作業者の内部被曝が露見すれば、原発産業自体が立ち行かなくなる、との観点がある。原子力産業は「原子力の平和利用」の美名の元に人的犠牲を強いてきた。
 原発の通常運転でも様々な形の有害な放射性物質が環境に出ていて、それによって昆虫や植物とかにも障害が出てくる。また、近くに住んでいる5km圏のみならず、原発から50km圏内に住んでいる人たちの健康障害の問題もある。子供の白血病の発病率が高いとされる。
 LEUREN MORET氏のThe Radiation and Public Health Project(放射線と市民の健康プロジェクト)によると、アメリカにおける小児の歯中のストロンチウム90含有量と原子力発電所年間稼働率上昇とともに直線的に増加を示している。

3.人工放射能の問題
 埼玉大学名誉教授市川定夫氏によると、人工放射能は人体に蓄積するとする。天然の放射性物質であるカリウムは人体に排出する機能がある。カリウムに近いセシウムは人体に蓄積する。
 元ゴメリ医大学長、ユーリ・バンダジェフスキー博士によると、セシウム137の体内における慢性被曝により、細胞の発育と活力プロセスがゆがめられ、体内器官(心臓、肝臓、腎臓)の不調の原因になる。大抵いくつかの器官が同時に放射線の毒作用を受け、代謝機能不全を引き起こす。平均40-60Bq/kgのセシウムは、心筋の微細な構造変化をもたらすことができ、全細胞の10-40%が代謝不全となり、規則的収縮ができなくなる、と指摘している。
 矢ヶ崎克馬博士によると、天然のウラン238は原子が一個一個バラバラに存在する。α線照射範囲の40ミクロンに比べて離れた所同士に存在するので、分子切断の場所が相互作用をしない。
 人工的な放射性物質は必ずパーティクル=微粒子になる。例えば、1μmの直径の微粒子の中に約1兆個の原子がある。100万個の100万倍。これが体内に入った場合は、ひとつの場所から次々とアルファ線が放出される。塊になった放射性物質内部被曝するという事は、極めて確率の高い発がん様式になってしまう。
 福島第一原発事故は人間だけではなく、植物も動物も全部同じように種の保全という事に関して、また種の多様性を保持するという事に関して、非常に大きな打撃を受ける事になる。

4. 皮膚症状
 α線核種が皮膚に付着した場合、皮下奥までα線が届かず、α線が届く範囲の細胞を全部殺す。よって、丸くエッジが明瞭な穴が開き、時に出血し、あまり痛まない。
β線核種の場合は、1粒子の大きさが大きい場合、皮下深くまで届き、神経を傷つけ、痛みを伴い、エッジが不明瞭な発赤ができ発赤の範囲も広くなる。さらに大きな粒子の場合、手や指が丸ごと腫れ、回復が遅く、しばらく腫れて激しく痛む。
福島第一原発に近い地域ではAmなどの短寿命α線源によって鼻血や皮膚の穴が開く症状が起きた。現在起きている鼻血はβ線源の付着が主要因であり、内部被曝が進行して、粘膜に炎症を起こしやすくなっている。

5.増加が予想される様々な疾患
 チェルノブイリ事故後、6年経ってから様々な疾病が激増した。循環器系(心筋梗塞や血管内膜炎)の疾病率は100%近い。毛細血管の血流抵抗増加と血流量の減少が起きる。一方、癌というのは発症数からすると極わずかであって、内部被曝による恐ろしさは血管への打撃や免疫低下によってあらゆる病気に羅患することにある。
 甲状腺機能障害による脳機能低下、もしくは能そのものへの打撃により、脳機能障害、記憶力低下、精神症状、脳の萎縮、言語能力の低下、手足の動かす能力の低下が起きる。脳細胞は再生せず放射能による影響を受けやすい。脳機能低下は知覚しづらいが、程度の差はあれ100%の確率で発生する。症状が進むと極度の倦怠感が発生して社会生活が困難になる。いわゆる「ぶらぶら病」である。

まとめ
福島第一原発事故原発政策を進めている他国にとっても深い影響を与えた。ドイツ・イタリアは脱原発へと舵を切った。これは日本と同じく国連の定める旧敵国条項適用国であるので、核武装オプションがあり得ないことも影響していると思われる。
 ジミー・カーター元大統領は大統領在任中1977-81年に、構造や設計の複雑さから再処理工場及び高速増殖炉を含む核燃サイクルからの撤退を決めた。カーター元大統領は海軍で原子力潜水艦ノーチラス号の設計を担当した。米海軍は原潜や原子力空母を保有しているので、核技術については詳しい。米原子力規制委員会への人材供給源ともなっている。
カーター元大統領は1977年日本に対し、日米再処理交渉を通じて日本の核燃サイクル撤退を要請している。これに日本側は抵抗した。ズビグネフ・ブレンジンスキー大統領補佐官(当時)がカーター大統領に対し、日本側の意向を伝え説得した。実質的には米国側が日本に主張させ、カーター大統領を翻意させたと推定される。
結果、アメリカはウラン濃縮設備維持しつつも、プルトニウムを抽出する再処理施設はすべてを廃止した。一方、日本では六ケ所村に再処理工場を稼働させつつあるが、高速増殖炉もんじゅも含めて事故で頓挫中である。その惨状であるにも関わらず、すべてMOX燃料を使用する「大間原発」を電源開発?が建設中である。大間原発施主である日立製作所には元経産省事務次官社外取締役として天下りしている。天下りというのは収賄先物取引に過ぎない。
 原子力発電に経済的な利点はない。石油をウランに変えて、エネルギー置換をしている分、損失が大きいとされる。あえて原子力をエネルギー源とする価値があるのは潜水艦だけである。その潜水艦も核ミサイルを搭載して、敵国付近の公海を巡回するという核戦略の一翼を担っているから存在しているに過ぎない。
 英国核燃料会社は福島第一原発によって日本の原子力政策の不透明感が増すなか、中部電力など10社とのMOX燃料契約を白紙撤回した。セラフィールド再処理工場も閉鎖予定としている。英国学会は2012年ICRPと分かれて独自の研究を進めている。
 日本は米露仏と原子力協定を締結している。フランスは「ド・ゴール主義」に基づき、大国の狭間で一定数の核武装を実現して主権を保持する狙いがあったと思われる。米日間の力関係を鑑みれば、日本側に核燃政策において自主的な権利が存在するとは考え難い。米国から提供されたウラン燃料の所有権は米国側にあるとされる。抽出したプルトニウムについても、同じであろう。
 核兵器保有国は核武装する上でウラン濃縮施設を維持しなくてはならない。ウラン濃縮設備を稼働させ続けるためにウラン燃料需要先として原発が利用され、原発が生み出す使用済み核燃料からプルトニウムを再処理抽出し、高速増殖炉で更に濃縮を行い、超高性能核兵器への転用が目指されてきた。
 チェルノブイリ事故で放出された核燃料は装荷量180tの内10t程度だと推計されている。福島第一原発で事故を起こした1・2・3号機炉心内燃料及び3号機燃料プール核燃料総重量は69+94+94+89=346tである。
 福島第一原発事故おいて公式には2号機が最大の放射能放出源だとされているが、14日3号機燃料プール爆発、15日4号機の爆発火災や21日3号機原子炉からの放出もかなりの量だったと推測される。3号機燃料プール爆発映像を見ると、あの事故だけでチェルノブイリを超える10t以上の核燃料が飛散したと思われる。
 CTBT高崎観測所の測定結果によると、3月15〜16日(3/15/15:55〜3/16/15:55)にかけての1日間で、膨大な量の放射性核種が検出されている。中でも半減期6.61時間のヨウ素135が370000mBq/㎥という高濃度で検出されている事は3号機燃料プール爆発が核暴走であった傍証例と言える。また、3月21日、3月30日、4月18日にも断続的に放射能濃度の大幅上昇が見られる。
 原発自体は発電システムであるが、結果的に核暴走や膨大な放射能放出が発生するという点では、巨大な核爆弾という特質を持つ。長い年月で見れば、過酷事故の発生確率は100%に極めて近い。
 広島長崎原爆は核戦争の「始まり」だったのであり、フクシマはその通過点に過ぎない。
参考文献
内部被曝 岩波ブックレット 矢ヶ崎克馬 守田敏也 2012
IWJ 矢ケ崎克馬琉球大名誉教授インタビュー 2014
日米同盟と原発 中日新聞社会部 2013
肥田舜太郎医師講演 2011
福島原発の真実 平凡社 佐藤栄佐久 2011
原子炉時限爆弾 広瀬 隆 ダイヤモンド社 2010
福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書 福島原発事故独立検証委員会 2012
フクシマの真実と内部被曝 小野俊一 七桃舎 2012