アベノミクスのゆくえ

1.消費税率引き上げの弊害
 もてはやされた「アベノミクス」だが、誰の目に見ても景気停滞が明らかになり、挙句にはジェイコブ・ルー米財務長官に「消費税率10%への引き上げを止めろ」と警告される事態になっている。(1)

 麻生財務大臣は景気失速は「天気のせい」として「あんた、ビール飲まなかっただろ」と答弁した。
 その内、「天候不順にて自動車とマンションの育成が悪く」とか言い出すのではないかと揶揄されている。

 内閣府は景気悪化を表明しているにも関わらず、日銀黒田総裁は相変わらず「景気はゆるやかに回復」の問答を繰り返している。
 マンション販売は前年比で半減し、都内は60%減と言われている。最大手スーパーのイオンは実質的には赤字に転落した。

 もっとも、消費税率引き上げを決定したのは民主党野田政権であり、これを是としない小沢さんらは党を割った。それだけ重要な政策決定であったのだとも言える。
 付帯条項で景気情勢によって税率引き上げ判断を行うと規定されていたが、最終的に税率引き上げを決定したのは安倍内閣である。

 税率を5%に戻せ、という意見もあるが(2)、安倍政権はこのまま10%引き上げを強行する可能性は高い。
 10%への引き上げは本年の7-9月期の景気で判断するとなっている。だが、2008年のリーマン・ショック以上の激しい落ち込みとなっている。

 日本の消費税とは一律課税を行う大型間接税であり、この税制の本質は国家の運営費用を労働者から徴収するということである。
 また、輸出戻し税制度により輸出補助金の役割も持っている。

 消費税率が引き上げとなると、供給者・需要者共に価格決定余剰が減り、結果として市場が収縮する。
 徴税を回避するための買い控えや、経済の地下化や自家内製化が進む。

消費税は社会保障に使うと言われているが、安倍政権は年金の物価連動伸び率削減や、後期高齢者医療保険料が引き上げを行おうとしている。

2.超量的緩和の弊害
 2013年4月、黒田総裁は「無期限」「無制限」の量的緩和を発表した。地銀が5年を超える国債をリスク債権とみなして売り払い、国債金利は瞬間的に暴騰した。
 結果、100兆円を超える国債を日銀が買い続けて、超量的緩和前の水準に戻した。
 異次元緩和を迫られたのは欧州の金融危機である。発端はアメリカの不動産担保証券債務不履行だ。超量的緩和により40兆円の投機資金がイギリスに還ったと言われている(要検証)。ラガルトIMF専務理事は日銀緩和を大いに喜んだ。

 量的緩和の利点は金利水準を下げることにある。借金を抱えている法人・個人は助かっている部分はある。
 ただ、それだけの目的なら、白川総裁の毎月2兆円緩和で十分だったはずだ。
わざわざ無期限無制限の緩和をすれば資本逃避を招くだけであるし、それが狙いだったのではないかと、私は勘ぐっている。

 法人の国内投資は減少、海外投資は増加。個人の借り入れは増加した。景気を下支えする効果が差し引きどれだけあったのか分からないが、日銀が抱え込んだ巨額の債権リスクを考えると、疑問が多い政策である。

 日銀は他にも日経ETFREITやCPや社債まで買い込んでいる。「書画骨董以外はすべて買う」とまで評された。REITETFは債権債務関係が根拠薄弱であり、当然元本は保証されていない。中央銀行金融商品の最終処分場ではないはずだ。ETF保有高は7兆円に達すると言われている。年金預託金の株式購入額は20兆円程度のようだ。
 問題は公的機関が買い込んだ金融商品は巨額過ぎて売るに売れない。一度売りに回れば、市場は「恐怖と欲望」で動くので、怒涛の売り浴びせに遭うだろう。

 緩和の問題は入口はあっても出口がない「ホテル・カリフォルニア現象」が存在する。緩和を止めれば、国債金利は暴騰する。日銀が保有する200兆円を超える国債残高では金利が3%程度動いただけでも、引当金分が吹き飛んで債務超過となる。
 そうなると、日銀券は「債務超過団体の発行した紙幣」ということになってしまう。

 元々、10年物の国債金利が0.4%代とか押さえつけていることが異常なのである。スペインで発行している日本国債には5%程度の金利水準である。
であるから、「金利が正常化」すれば5%代になってもおかしくない。
ヘッジファンド筋は3%程度への暴落を見越して、仕込みをしているとも噂される。タイミングは黒田総裁が次の緩和拡大を宣言したときに売り浴びせをするのではないかと識者は指摘する。

 超低金利誘導は財務省が金融機関を行政指導して国債を引き受けさせている面がある。なぜ低金利にしているのか。米国債よりも低い金利にして、「新帝国循環」と指摘される、円資金がドルへ流出するように「国際的な密約」があるのではないかと噂される。
 国債発行残高が1000兆円を超えている。これに地方債も別途存在する。そうなると、金利が上昇すると、必然的に国債発行額に制限が加わる。それにより予算枠が減少する。そのことはすなわち各省庁の権限縮小を意味する。漸増主義の霞ヶ関にとっては由々しき事態である。

 それこそ、歳出削減するのなら、私はプルサーマル部分をカットすれば良いと考えるのだが、実際にはこれらの国策(米国策)部分は死守するのではないかと想定される。
 日米合同委員会の政策決定には逆らえない仕組みが存在するからだ。

 今日は嫌な記事を見つけた。民主党政権が小学校の35人学級を実現したのだが、これを40人学級にして先生を1.8万人減らし、予算を90億円削減するというのだ。(3)
 仮に投資と効用を考えると、子供への投資は有用である。日本の将来を考えたら特に保育や幼稚園や小中学校海外へ予算を投下するべきである。海外への援助で数千億、米国に対してはおそらく量的緩和で漏れだした金額まで考慮すると数十兆円の間接的援助をしているにも関わらず、たったの90億円節約するために、先生を削減するというのだ。
 なんかわざと国力を低減させるためにやっているのではないかと疑いたくもなる。おそらく思想統制する関係で、先生を削減し、労組対策を行いたいのだろう。

 すでにGDP比で国債残高は1942年の水準にある。常識的に考えれば戦争をする余裕はない。しかし、日本もドイツも負債があるゆえに戦争に突入していったとの指摘がある。(4)
 
 当り前だが、資本移動が自由な現代では、何かをきっかけにして、投機的な動きや資本逃避の動きが瞬時に起こる。
 当然、政府は手を売っており、海外資産5000万円以上の申告義務を課している。更に1億円を超える金融資産を持つ富裕層が海外に移住する場合は株式などの含み益に所得税を課税する検討に入った。


 破産前の法人よろしく、今の政府は思考も行動も無茶苦茶になるつつある。緩和の果てには、反動により金利の暴騰によって個人・法人が苦しむことになり、人民は通貨価値下落によって物価上昇に苛まれることとなる。

 
(1)ついに米財務省激怒「消費税増税やめろ!」日本の全マスコミはガン無視!麻生「景気失速は天気のせいだ!あんた、ビール飲まなかったろ?」←米財務省「バカか?消費税増税のせいだ!」怒りのルー長官と米財務省が公式文書で消費税増税を批判!
http://togetter.com/li/734613

消費税8%後の消費の落ち込みは、なんと過去最大のマイナス22.7%を記録!
http://ameblo.jp/lucky20000528/entry-11919044199.html

(2)ノーベル賞経済学者クルーグマン 「日本経済は消費税10%で完全に終わります。消費税は5%に戻せ」
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-3863.html


(3)「先生1.8万人減らせる」 財務省が「機械的に」試算
http://www.asahi.com/articles/ASGBQ53X0GBQULFA01J.html

(4)【借金に追われて】日本が太平洋戦争に突入した理由が悲しすぎる【原発靖国まで】
http://matome.naver.jp/odai/2136214578373977801