ハイブリッド・レゾナンスチューブスピーカーの謎に迫る


 長岡バックロードホーンはコンスタントワイド型ホーンを折りたたんだ内部構造となっていて、製作に投入する労力が大きい。
 大手のメーカー製が存在しないのは、仮に設計したとしても、製造時に費用がかかりすぎて商売にならないからである。キャビネットも大型になり、販売においても費用がかかり、製品化は困難である。

 そこで、BHは自作派の独壇場であったわけだが、これを簡略化できないか?という命題への答えが共鳴管型だと推測されていた。
 共鳴管型の利点は低音の素直さであるが、短所は低音の音圧が低いという事である。

 これに対する回答として、鈴木氏(カノン5D氏)の1回折り返し型・ハイブリッド・レゾナンスチューブスピーカー(HR型)が登場した。
 HR型の構造は管の途中で、大きく断面積を変える。1:3以上に大きく断面積を変える。旧来の考えでは極端に断面積が大きい共鳴管は動作しないのではないかとされていた。コロンブスの卵と同じで、鈴木氏は実際に試験を繰り返し「スィートスポット」を見つけ、従来の常識を覆した。
 セパラブルBHを開発した天野氏も「1回折り返しで低音が出るのはすごい」とコメントしている。

 鈴木氏の狙いはオーケストラを再生した時に「ドジャーン」と鳴る低域の量感を稼ぐためであり、和太鼓のような低音(伸びやかな低音)には向かないと明言している。

 前田氏の考察では、「折り返し部分の断面が振動板として動作しており、それに対して折り返し後の部分が共鳴管として動作している」としている。【図1参照】
 つまり、実物のSPユニット+1回折り返し型共鳴管とは別に、仮想のSPユニット+直管共鳴管があると、仮説を立てたのである。
 渋江氏は断面積と共鳴管内部の空気重量が関係しているとコメントされた。

【foではなくて、インピーダンス特性でした】(訂正20151230)
 鈴木氏によると通常インピーダンス特性(抵抗値)のピークが通常は2つでるが、これに対してインピーダンス特性のピークが一つになるポイントを狙うそうである。【図2参照】
 (説明)スピーカーユニットはボイスコイルを空芯コイルと見立てると、振動板ユニットを鉄芯であり、ユニット全体で鉄芯コイルとみなせる。よってインピーダンス特性で2つピークがでる。

 更に鈴木氏によると共鳴管は通例1倍音・3倍音・5倍音・7倍音と共振が起きる。2倍音が出るポイントが良いと指摘している。
 構造を複数変更して周波数特性を測定したデータを編集して図表にし、【2月にブログで公開】するとのこと。
他のコメントでは、コーナーを△処理すると周波数特性のディップが解消する。
折り返し後の共鳴管を仕切ったは「仕切ったほうが音が良かった」とのこと。


○ブルースカイ
 長岡鉄男先生は2回折り返し型共鳴管型スピーカー「ブルースカイ」という作例で、断面積と低音の関係を指摘するに留まった。
「ブルースカイ」は音響迷路であるとの指摘があるが、2回折り返しでも共鳴は起きる。

○まとめ
 ハイブリッドレゾナンス型SP(HR型)は長岡BHを無力化する可能性を秘めた意欲的な作例である。仮にHR型が長岡BHと同等かそれ以上に充実した低音や音圧レベルを出せるのであれば、以後自作SP界に大変革をもたらすであろう事は確実である。
 利点の一つにはHR型は構造が簡単であり、BHよりも小型化が可能であり、SPユニットに対する背圧がBHよりも低く、低音に伸びやかさが出る。


参考
ブルースカイという共鳴管型スピーカー 08/07/27
http://tzaudiocrafts.web.fc2.com/bluesky.htm
「音は共鳴管スピーカーの特徴が出た、くったくがなくハイスピードで散乱するサウンド。」
「とにかく音の抜けがよく、何を聴いても開放感抜群なのですが、これが仇となりソースをかなり選ぶSPとなってしまったようです。」

共鳴管スピーカー、ハイブリッド・レゾナンスチューブを考察する。
http://d.hatena.ne.jp/Takaon/20151208