アメリカに収奪され尽くして衰亡する日本

1.国富の流出を止めよ。
 日銀がまた年率80兆円の量的緩和を決めた。外銀が資金の取り手となっており、一部はドル転している。量的緩和そのものによる円希釈化に伴う円安効果のみならず、金融自由化体制下により国富が流出する傾向が強まるだけであり、投機資金のみならず国内資金も円安リスクをヘッジするために、外貨への兌換が強まり、結果として円は弱体化して、いずれ国際的通用力を喪失する。日本が想定する未来とは、輸入が細り物資が極度に高騰した窮乏社会である。

 現体制の問題点を列挙する。量的緩和資金に裏付けする日銀資産が存在しない点がまず挙げられる。日銀の年率80兆円の量的緩和とは、一重に実物経済に裏付けされていない円の希釈化政策であり、円価値の毀損政策である。「通貨は国家なり」ともいえ、通貨価値は国家の信用を図る重大な指標である。明治維新以後貿易赤字だった産業体制を1980年代に至る過程で産業力強化を果たし、ようやく貿易黒字化した。それにより国富の蓄積が進み円価値の上昇を生んだ。
 しかし、中曽根政権下で起きた1985年以後の金融自由化により、金利や国外への資本移動が自由化された。生産設備は需要先への移転が進み、国内の産業空洞化の主要因となった。

 平成16年度の434兆円日本の対外資産残高、平成26年度のは945兆円と10年で500兆円も増大している。
 従軍慰安婦賠償に10億円出すことに批判的な意見が出ているが、大手媒体において米国への数十兆円単位での実質的国富献上について疑義が出される事は極めて少ない。米国への国富流出こそが、我々の貧困化の主たる要因となっている。国富流出を止めなくして貧困化を止める事はできない。
 対米隷属体制は極めて過酷な体制となる。それは、国富流出を知られたくないがために、「貧困問題も無きもの」にする強制力が働く。引いては貧困化対策もなおざりになる。 日本の一人当たりの名目GDPが米ドル換算にて過去最低となり、1996年にOECD加盟国の中で第3位だったが、2015年には34か国中20位にまで下落した。


2.自己の生存そのものを危うくする対米隷属構造
 経世会の政治家は人民の幸福を一定程度考慮した政治を行い、米国に対して「交渉」を行った。中曽根政権は米国に対し様々な便益を図ったが、後藤田正晴官房長官がお目付け役の役割を果たし、後の清和会小泉・安倍政権と比較すれば一定程度に留まった。
 やはり、極めて悪辣な役割を担ったのが、小泉純一郎であり、イラク戦争開始直前に外為特会経由で38兆円にも及ぶ為替介入・米国債購入を行い、実質的なイラク戦争資金供出を行った。後に陸海空の自衛隊イラク戦争兵站行為を行っている。
 イスラム国を含む中東の大混乱の発端は米国による、直接軍事介入が原因であり、それを資金や軍事的側面から大規模支援を行った日本政府にも重篤な責任が存在する。
 米軍はイラクで90tの劣化ウラン弾を打ち込んだ。劣化ウラン弾は着弾と同時に高温となり、微粒子化して周囲に散らばった。成分を検査すると一部には「使用済み核燃料」と思われるPuなどの超ウラン元素も含まれており、単にウラン235濃縮過程で発生したウラン238のみでは無い可能性も指摘されている。よって毒性は想定されているよりも遥かに高いと思われる。

 遥か昔、紀元前722年、北イスラエル王国は、大国アッシリア帝国に滅ぼされた。北イスラエルの10支族は、奴隷としてアッシリアに強制連行され、それ以降、歴史から消えた。
 紀元前587年、南ユダ王国新バビロニア王国によって滅ぼされた。南ユダ王国の住民はほぼ全員新バビロニア王国へ強制連行された。これを「バビロン捕囚」という。
 アッシリア帝国及び新バビロニア王国の版図は現在のイラクと同じ場所にある。
 ブッシュJrの言う所の「新十字軍」とはキリスト対イスラムだけでなく、イスラエルユダヤVSイラクの様相をも呈している可能性がある。

 とはいえ、米国の主たる狙いは原油である。米国は自噴するイージーオイルの減耗が続き、遂にシェール層を50気圧の水圧によって破砕してオイルとガスを採掘するという、採掘費用が高いエネルギー源に頼らざるを得なくなっている。
 米国は資源の減耗対策として、採掘費用の安いイージーオイルを狙って、世界的な計略・軍事戦略を行っている。
 トルコはイスラム国と原油取引を行っており、イスラム国がシリア領内で採掘した原油の一部はトルコから日本へ輸送されている事が報じられている。イスラム国とは米国とトルコ合作によるシリア国盗り戦略であるが、歴史的シリアとの結びつきの強いロシアがこれに対して、アサド政権を護るために軍事介入を行った。

 日本は戦後軍事力の行使を封じた。円通貨の価値を高め、平和外交を前提として資源を購入している。確かに米国の「軍事行使を前提とした」エネルギー調達戦略に乗っかっている部分もある。かつて、田中角栄首相(当時)はエネルギー自主調達のために文字通り世界を東奔西走した。これに対してキッシンジャーらの米国要人は反発を示し、米国はインドネシアでは角栄訪問の対してジャカルタ反日暴動を策謀した。

 米国隷属構造は、世界に戦乱をもたらし、米国は日本のエネルギー自主調達を妨害し、日本から巨額の国富を収奪し、今や米国主導の資源強奪戦争への強制参加を求められている。南スーダン陸上自衛隊PKO舞台として参加しているが、戦争法案成立後、更に積極的な参加を行わされると記した内部資料が暴露された。南スーダンでは原油を産出する。南スーダンへの介入も資源確保を狙いとしていると考えられる。

 日本のエネルギー自給率は4%と言われる。これはあまりにも低い数字であり、エネルギー自給率を高めるべきである。円の通貨価値にあぐらをかいて、あまりにも海外依存を増やしすぎている。欧州では石炭の採掘を絶やすことなく続け、石油やガスの海外調達価格に対して、交渉カードとして使っている。日本は露天掘りの幾箇所か以外の石炭採掘を止めてしまった。夕張炭鉱のあった夕張市財政再建団体に転落した。地方の衰退は日本の海外偏重のエネルギー戦略とも関連している。


3.安倍政権が強化する対米隷属構造
 中国はアフリカ諸国で公共設備やインフラを提供して、その見返りに資源権益を得ている。この手法は日本がODAを通じてアジア諸国で行ったのと同じである。平和的な手段で資源の権益を得ることができる。
 「アラブの春」など呼称される北アフリカの政変は、米国が中国の資源権益を引き剥がすために仕掛けたとも言われている。
 日本は米国の様に資源強奪バイキング方式を取る必要なないし、取るべきでもない。そもそも、米国自身は産油国であり、米国内の資源浪費構造を改めれば、米国における原油の完全自給は可能であろう。
 日本はエネルギーの自給率を高める一方、米国に関わらない形で平和裏に資源自主調達を推進するべきである。

 直近最大の問題は国富の流出である。
GPIFは2014年10月31日、運用方針の見直しを発表した。
国内債券60%、国内株式12%、外国債券11%、外国株式12%から、
国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%になった。
当時の残高130兆円を基準にすると、国内株式に17兆円の資金が、外国証券に22兆円の資金が振り向けられた事になる。これにより、2014年10月末から12月にかけて、日本株価が急上昇し、為替レートが大幅円安・ドル高に振れた。
 運用比率の見直しはGPIFのみならず公務員共済などの3共済追随したと報道されている。
 公的な運用金を外貨で運用する必然性がない。安倍政権は亜米政権などと揶揄されているが、国内資金を米国に供出することよって、米国に権力を担保されている。更には日銀が直接外債を購入することも検討したようだが、さすがに理事らの反対で立ち消えになった。
 更に安倍政権は戦争法案を成立させ、米国の軍事行動に強制参加させられる恒久法体制となってしまった。これは憲法の無力化であり、かつての政権では考えらない暴挙であって、本来ならとっくに倒閣させられているはずである。しかし、安倍がいかに暴政を敷いても、倒れるどころか御用マスコミによって支持率上昇などと報じられる。日本は報道が機能していない。
 自我を失ったマスコミは対米隷属構造を強固にしつつある安倍政権にかしずいて延命していくつもりである。しかし、実質的には「お前はすでに死んでいる」のであって、この後に安倍政権のファシズム化や、その後継者の登場が起きることは想像に難くない。


4.異常な医療体制は米国による謀略である。
 中曽根内閣は貿易黒字の増大に伴い、米国から医療機器や薬の購入を約束させられた。日本の異様な検査体制は米国の要望によるものである。
CTも胃透視も頭部MRI検査も、人体への打撃が大きい。なんらかの症状が出た時に限って検査を行うべきである。検査漬け・薬漬けの医療体制は米国が関与している。
 精神科医による安易な抗鬱剤処方も、1970年代に米国内で、産官学の共謀によって作られた詐欺医療体制である。抗鬱剤の問題点は高い常習性と、自殺衝動と他害衝動である。米国で発生する乱射事件の一定比率は抗鬱剤処方が関係していると言われている。余談だが米国の乱射事件地図を見ると、原発の立地地図と似ているようにも見える。
 日本の医療費は年間38兆円にも達しているが、この内何割かは米国企業が持っていく。医療が人命を救っているのなら問題無い。感染症に対する投薬や救急救命処置は効用があるのだが、慢性疾患に対する投薬は薬害により、人命を削ぐ。
 9割の医療は無駄と言われている。単純計算で34兆円は無駄に使われ、病気を増やし寿命を縮めている。
 元来、国際的大財閥は人命尊重の意識がない。利潤の追求過程で人命を損ねても、それによって発生する訴訟リスクは勘案するだろうが、本質的に人命の安全を確保するという観念はない。原発核燃も戦争も財閥系企業が動員しなければ成立しない。金儲けは人命よりも優先する体制が敷かれる。人民が自身を守るのは、社会的リスクを忌避する知識と行動力である。


5.過剰な自由貿易体制は失業と貧困を生む
 自動車部品会社の工員が月給手取り14万円と聞いて驚いた。年収200万円に到達するかどうかという金額だ。一方、カルロス・ゴーンは年収10億円である。工員が別に怠けているわけではなく、カルロス・ゴーンが工員の余剰価値を搾取しているに過ぎない。
 2017年に消費税増税が再度行われ10%になろうとしているが、ほぼ一律に課税される大型間接税制で10%に達する国は他にない。消費税には輸出補助金の役割がある。海外へ販売した品目の消費税は輸出企業へ還付されているのだ。
 また、TPPの批准が迫っているが、経産省は自動車の輸出増加を利点とみなしている。賃金体系を見ても分かる通り、対外貿易への過剰依存は富の偏在や、国富の流出を発生させる。例えばカルロス・ゴーンは10億円の収入の内、5億円を納税しても残りの5億円の一部は日本円で残し、かなりの金額をユーロやドルに移すだろう。これは他の富裕層も同じである。金融資産が数億円になれば、リスクヘッジのために必ず一部を外貨に移す。富の偏在も国富の流出を生む。
 むしろ、貿易関税を高めて、関税収入を国家運営費用に回すべきであり、その分、国内消費経済を縮小させている消費税率を下げるべきなのである。
 戦後、日本は木材の輸入関税を引き下げた。これが山間部の疲弊の直接的原因となっている。国内材は輸入材に対して価格競争力を失い、切り出されずにいる「貯林」が増えている。
 なるべく内需で国内消費を賄う経済体制へ回帰して雇用を増やすべきであるが、実際には全く真逆の方向へ進んでいる。過剰な自由貿易は「失業の輸出」となり、相互の国家で失業が発生する。
 日本における労働分配率の減少は、雇用者側だけでなく従業員側の意識変化が関係している。ルールを増やし、業務運用に付帯する事務処理が増大している。非正規雇用者を増やし、非正規雇用側に報告書の提出を増やし、責任を担わせようとしている。同一労働同一賃金の原則からはずれ、社内に身分制度を構築し、しかも、管理職が責任を負わないような仕組みを構築している。
 悲惨なのは非正規雇用者側である。正社員よりも賃金が安く、しかも失敗が起きたた時の責任を負わされる。管理職は責任を負うのも業務の内だと思われるが、江戸時代も想起させる不可思議な体制になりつつある。
 どこまでが、日本の自発的なものなのか分からない。官僚機構のキャリア官僚制度が民間にも降りてきたようにも見えるが、このような身分体制を発生させたのは旧労働省官僚達が連綿と仕組んできたから成立したのである。その背後に財界や米国の意図が介在しているのは確実だ。


6.人民が取りうる手段は限られている。
 このような「戦況」に陥ったのは選挙を通じた人民の選択によるものである。テレビの詐術を理解できない無知蒙昧の愚民が跳梁し、ネット言論も過半がゴミどころか有害である。日本はこのまま一本調子で凋落していく。3年後には様相が一変しているだろう。放射能禍による能力低下が、知能水準を下げ、暴力性を高め、社会を揺籃しつつある。
 選挙戦を通じて政権交代を目指すべきであるし、その努力を行わなければならないが、残念ながら、人民の意識は低く、対米隷属構造を打倒するだけの民意の発露があるとは思えない。むしろ、隷属し、自発的意思を示さないことで生存が担保されてきた今までの体制を死守するために、変革勢力を叩くことに地道をあげる反動人民が数多いる。
 我々が取りうる数少ない手段として、家計の内容を見直す必要がある。なるべく他者に頼らないで、自分で解決するように創意工夫する必要がある。収入を増やすよりも支出を減らす方が容易であり、環境負荷を低減し、自身の能力を高めることになる。



参考元
アベノミクスの効果なく日本の貧乏化が急速に進んでいるのはなぜ?:われらの国富がすでに945兆円もアメリカ様に貸し出されて戻ってこないからと知れ!
http://blogs.yahoo.co.jp/hisa_yamamot/35543467.html
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=310754
注2:財務省 平成26年末現在本邦対外資産負債残高
http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/iip/2014.htm
注3:財務省 平成16年末現在本邦対外資産負債残高
http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/iip/16_g5.htm
日銀、米国と真逆のさらなる追加金融緩和か…日本経済、本当の異次元状態に
http://biz-journal.jp/2015/12/post_13093.html
日本の国富を米国政府に還流させる新帝国循環とは
http://indexes.biz/economy/1292#.VoNN4raLQ1I