米国発サブプライム自動車ローン危機

1.自動車ローンが原因のサブプライム危機
 ニューヨーク連銀がサブプライム(信用力の低い個人向け)自動車ローンの加速を受け、警鐘を鳴らしてる。サブプライム自動車ローンは増加している。連銀のリポートによれば、7-9月期の家計向け融資は約5年ぶりの高水準となる12兆1000億ドルに達し、住宅ローン、自動車ローン、学資ローンの残高は全て増加した。(1)
 アメリカは、また懲りずに、返済能力の低い市民へ、モーゲージローン、自動車ローン、学生ローンなどを売りまくっているのだ。D.I.(Diffusion Index ディフュージョン・ インデックス)が悪化しているにも関わらず、住宅等の景気指標が高く見えるのはそのためだ。
 2015年に組まれた自動車ローンの23.5%がサブプライム・ローンで、金額は約2000億ドルにのぼった。サブプライム・ローンの多くがリパッケージ債として投資家に販売された。(2)
 これにより、米国発の自動車ローン焦げ付き破たんが起きると言われている。ゴールドマンサックス、ドイツ銀行などが、自動車ローンを組み込んだ仕組み債を乱発している。 2008年のリーマン・ショックにより、アメリカは住宅ローンの証券化で懲りたはずだが、基本的に同じ事を行っている。自動車ローンで与信も通らない人達にローン組ませて売まくり、それらの巨額な債権が証券化されて出回っている。カーローン焦げ付き急増により、住宅ローンのサブプライム危機と同様の事が起きている。自動車のサブプライム・ローン返済の滞納率が2009年以来最高レベルに達している。

 結局、このような事が起きる背景には、短期的に利潤を上げたいブローカーの存在や、危機が顕在化する前に巨額の退職金をせしめていく金融機関の人間達がいることが原因である。


2.学資ローン問題
 延滞率に関して言えば、米個人向け融資で最も憂慮すべきなのは学資ローンのようだ。米債務の中で住宅ローンに次ぎ2番目に残高が多い学資ローンは、7-9月期時点で延滞率が約12%だった。景気回復をよそに学資ローンの延滞率は改善しておらず、依然として過去最高水準に近い。
 米国の学資ローン残高が多いのは、「経済的徴兵制」によって大学の学費が故意に高く設定されている点と、ローンによって信用乗数を膨らませて景気の拡大を演出したい国家と、利潤を貪りたい金融機関の思惑が存在する。
 日本も同様に学資ローンの取り立てが強化されており、経済的自衛隊徴募体制の一環ではないかと指摘されている。


3.米国の石油・ガス生産会社破綻増加
石油・ガス会社の10−12月(第4四半期)の破綻件数が四半期ベースとしてはグレート・リセッション(大不況)以来の高水準に達している。(3)
 2014年には早々と日本の商社が巨額の損失を計上してシェールガス事業から撤退している。住友商事は米シェールガス事業の売却等を受けて、2400億円の損失を計上した。大阪ガスも損失を290億円計上している。(4)
 ロシア(とフランス)がシリア情勢へ介入するや否や、ISISは勢力を削ぎ落とされた。トルコへ密輸していたタンクローリー車500台も爆撃された。どうやら、日本はトルコからISISが盗掘した原油を買っていたようだが、そのルートが途絶した。
 シリア情勢が安定化するにつれて原油価格も下落した。イラン原油の国際市場への再登場も下落に寄与している。
 ドイツ銀行のエネルギー投資に焦げ付きが出ているそうで、倒産の噂が出ている。ドイツ銀行は中国への投資にのめり込み、中国企業の破綻が続いていることが原因となっているようだ。日本の商社のように「米国側に騙された事に気がついて」早々に見切りを付けて、損失を計上すれば良いのだろうが、証券化の問題や金額が大きすぎて減損処理ができないのだろう。VW問題やギリシャ問題も追い打ちをかけている。
 
 世界的な需要低下や株価の乱高下があって、素人考えでも雲行きが怪しい。3月危機説や5月危機説があるが、どの道、世界的な株価の暴落は避けられないだろう。


(参考元)
(1)米サブプライム自動車ローン急増−当局が警鐘
http://jp.wsj.com/articles/SB11673646430017294066804581366780803169842
(2)米 自動車のサブプライム・ローンがメルトダウン中!
http://blog.livedoor.jp/wisdomkeeper/archives/51980785.html
http://beforeitsnews.com/economy/2016/02/subprime-auto-loan-meltdown-is-here-2800228.html
(3)米石油・ガス会社の破綻、10−12月は大不況以来の高水準
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NZVY9R6JIJUZ01.html
(4)TPP批准後の世界を想像する。
http://d.hatena.ne.jp/Takaon/20141026
このペースで破綻が続けば、2016年にはさらに増える可能性がある
http://investoronline.blog.fc2.com/blog-entry-438.html
トヨタアメリカ金融会社の自動車ローンで人種差別的金利
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00315388.html
アメリカ司法省などは、2日、トヨタアメリカ金融会社の自動車ローンで、人種差別的な金利が設定されていたと発表した。黒人や、アジア太平洋諸島の出身者の金利が高くなっていて、トヨタ側が、2011年以降に不利益を受けた顧客に、最大2,190万ドル(日本円でおよそ26億円)を支払うことで合意した。司法省はまた、トヨタ側が、ディーラーのローン金利裁量権を制限するなどの再発防止策をとるとしている。』