戦争推進アニメ世に憚る

敬称略
1.プロパガンダとアニメーション
 日米共にアニメと軍事的宣撫工作とは密接な結びつきがある。日本海軍省は「海の神兵」を作り、米軍はディズニーに戦争遂行アニメを作らせた。ミッキーマウスが「ジャップ・ジャップ」と連呼する訳だが、戦後は政府資金でウォルト・ディズニー本人が登場する原発推進ドキュメンタリーを作成している。

 日本は戦後、反米、反戦の機運が強く残り、手塚治虫らの影響により、アニメでもあからさまな戦争翼賛アニメというのは少なかったが、近年では「ジパング」など戦争をリアルに描写して、戦争の悲劇性を薄めた作品も見られるようになった。
 元祖「宇宙戦艦ヤマト」をどのように捉えるのか難しいところがある。表面的には沈んだ戦艦大和を蘇らせて・・・という点を考えると「戦争よまたもう一度」的な作品かと思われるかもしれないが、物語中においては異星人との熾烈な戦争による悲劇が繰り返される。それでも、西崎義展的なものへの反発もあり、富野由悠季安彦良和ガンダムを通じて戦争の悲劇を物語の主柱にして作品を作った。
 基本的にガンダムシリーズは戦争の負の側面を一定程度描き続けてはいる。富野は元来、世界名作劇場的な作品作りたかったそうなのだが、サンライズの制作陣では人物の緻密な動画が作れないので、ロボットアニメに志向していくしか無かったという事である。
 サンライズのロボットアニメといえば、高橋良輔の系譜もあり、谷口悟朗が弟子筋にあたる。谷口悟朗と近い人物であった北村真咲が犯罪予告”冤罪”で逮捕されたが、私は政治弾圧であったのではないかと疑っている。
 政治的にはProduction I.Gも気を吐いている。谷口悟朗Production I.Gで「純潔のマリア」を発表している。

 昨年、政治的に重みがあったのは、手塚プロ高橋良輔脚本の「ヤングブラックジャック」である。ベトナム戦争批判、アメリカの人種問題などに切り込んだ作品だ。1巻目BDの売上枚数が「おそ松さん」が7万枚を超えたヒットとなったのとは対象的に、ヤングブラックジャック」は500枚代であり、商業的には厳しい状態だ。


2.A-1 Pictureに気をつけろ!
 A-1 Pictureは意識しているのか、偶然なのか、Production I.Gに名前の構造?が似ている。しかし、作っている作品は対照的である。
 Production I.Gといえば、竹田逭滋企画の「Blood+」など反米色の強い作品を手がけている。反戦色が強い押井守監督の「スカイ・クロラ」も製作している。
 一方、A-1 Pictureは「宇宙兄弟」などのように米国翼賛アニメを作っている。「宇宙兄弟」と福島第一原発作業員を描いたマンガ「いちえふ」は人物デザインが酷似しており、関係のある人物が描いていると言われている。
 A-1 Picture作品ではソードアート・オンラインがヒットしたが、この作中では米国は日本よりも技術の進んだ優れた国であるという前提で世界観が構築されている。

 そのソードアート・オンライン自衛隊員の活躍をまぜこぜにしたような作品が「GATE自衛隊彼の地にてかく戦えり」である。
 題名からして、嫌な予感がしたが、そのまんまの内容である。ゲートが開き、異世界から軍隊が雪崩れ込んでくる。これをオタクの自衛官がバンバン撃ち殺して、機転を利かせて現場の指揮まで執って、ヒーローとなる。
 自衛隊はゲートをくぐって異世界へ進駐し、敵の大軍を近代兵器で10万人ぐらいブチ殺す。しかし、どういうわけだが、あれこれあって、異世界の美少女達と、一緒に戦うようになって・・・という話である。
 自衛隊広報部が協賛しており、GATE自衛隊彼の地にてかく戦えり」のキャラを使った自衛官募集ポスターまで作られた。(1)
  A-1 Pictureこそは現代の「海の神兵」を製作したような存在であり、アニメを通じた宣撫工作機関である。人民はこのアニメスタジオの存在を強く警戒しなくてはならない。

3.アクロバティック自己弁護ですら叩きの対象に・・・
 「ガールズ&パンツァー」の声優さんが作品を肯定的に自己弁護したつもりが、ツィッターでひどく叩かれて、ツィッターの更新を停止した。(2)
 私はガルパンを見てないし、見る気も起きない。内容は『「戦車道」の部活にいそしむ女子高生の物語です。戦車に乗って他校と戦うスポ根アニメ』らしい。
 声優さんが言いたいのは戦争推進アニメじゃないよ、ということなのだが、朝日新聞がつけた「安保や戦争、どうとらえるか」というタイトルに工作員が反応したようだ。著名人の反戦発言は組織的に潰すようになっている。それなりのカネも流れている。
 去年はサザンオールスターズの桑田も在特ズのしょぼい抗議デモで、謝罪に追い込まれた。そんなことにいちいち反応しなくて良いし、炎上するに任せておいたほうが名前が売れる。橋下徹とか、トランプ候補を見ればわかるが、わざわざ炎上させてのし上がる人もいるぐらいなのである。
 ガルパン自衛隊のPRポスターに使われたようだ。海上保安庁のポスターにも使われている。(3)
 また、「艦隊これくしょん」とか「AMNESIA(アムネシア)」などの軍艦を美少女に擬人化した作品も人気がある。
 しかし、自衛隊がアニメキャラを使って自衛官募集を募っても、戦争法制の影響からか、去年の応募人数は例年の3割も減少している。


4.日本の貧困化とイラク戦争は関係している。
 2003年のイラク戦争に日本は資金も軍も供出した。以後、日本社会の貧困化が進んでいる事との因果関係は直接的にある。日本人民に参戦した意識はなくても、他国からは日本も軍隊をイラクへ派兵したと認識している。チュニジアでのテロでは「日本人」という理由で殺害されている。
 今後、米国の戦争に直接参加するようになれば、日本の貧困化、表現や言論への統制は強まるだろう。当然、アニメも例外ではない。戦争を遂行するのに都合の良い作品に対しては、既にあからさまに後押しが行われている。
 アニメがどれもこれも戦争推進萌え作品になってしまったら、本当に楽しいだろうか?

5.戦争のつくりかた、と戦争の潰し方
 「戦争のつくりかたアニメーションプロジェクト」というのがある(4)。ナレーションは「蒼穹のファフナー遠見真矢役」の松本まりか。「蒼穹のファフナー」に思い入れがある人は、「戦争のつくりかた」のナレーションに「蒼穹のファフナー」が描いた破滅的な世界観とオーバラップするだろう。
 今、日本まさに「戦争のつくりかた」の絵本が述べている内容そのままに、戦争遂行体制にある。しかも、米国が資源を強奪するための戦争の尖兵にさせられようとしている。戦争に突入させないために何をすべきか考えて、あらゆる手段が行使されなくてはならない。
 積極的行動が嫌な人は社会への関わりを減らし、経済活動を縮小するという抵抗方法もある。戦争を止める方法はなんでも良い。政治的関与、表現や言論を使った抵抗、リアルな場所での反戦の意思表示、あらゆる方策を行うべきである。
 一度戦争が起きた場合、自分の身に何がおきるのかシミュレートしてみれば良い。どう考えても今よりも社会状況は悪くなる。すでに放射能禍で疾病の多発や、事故の多発が起きてる。更に戦争動員されるとなれば、日本社会の瓦解が前倒しになる。社会が混乱すれば、まともな経済取引も成立しなくなる。カオスとなった状況でどうやって生きていけばよいのか。いや、そのような状態へ追い込まれないように、万人が努力すべきなのではないか。


(1)7月新番『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』が自衛官募集ポスターに採用!?
http://www.animate.tv/news/details.php?id=1435236955&__from=mixi
(2)人気声優の上坂すみれさんがツイッター休止へ!政治的な発言が原因で荒れる?「心ないリプライが看過できない数に」
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-10354.html
(3)島田フミカネイメージキャラクター自衛隊岡山地本3人娘_NHK
https://www.youtube.com/watch?v=Pi9vZzWlQaQ
【海外の反応】「日本の軍事戦略恐るべし!」自衛隊ポスターの萌え化に外国人が興味津々
https://www.youtube.com/watch?v=3asREZ6eu-k&ebc=ANyPxKqw4w8nfiR18ia6PjzaOdMKfJF6xCsrJB5D3_DAse3d0FOj7mfolRnqYCmfOenaBvxfU3Z0qs5njfuKQ2hAgSC7flpxUQ
(4)戦争のつくりかたアニメーションプロジェクト
http://noddin.jp/war/