円高が経済悪化の根源なのか?国内需要喪失要因を探る。

 円高になると、国家間の賃金格差が開き、工場の海外移転が進む、一方で、廉価な海外製品が国内に流入する。確かに自国の通貨が高くなると、輸出企業は不利な状態に置かれる。
 その場合、貿易赤字が積み重なることにより、通貨為替は変動相場制なので、自国の通貨が安くなって調整されるはずである。昨今、円は主要通貨に対して軒並み上げている。ところが、原油価格比較すると円の価値は下落している。灯油の値段は35円から80円になった。暴落と言ってよいだろう。
 そもそも、輸出しないと期末で赤字になってしまう程に、国内に需要が存在しない事が異常である。製品の質や性能は80年代よりも良くなっている。半導体関係では幾何級数的に性能向上している部門もある。車の燃費も良くなり、高い耐久性を誇っている。しかし、物が売れないというのは、なぜなのか。
 1980年の外為法改正で「金融の自由化」が行われた。それまでは海外で稼いだ資金や外債を売った場合は強制的に円転する義務があった。その束縛がなくなったので、企業や個人が外貨保有を膨らませた。円でしか資金が保有出来ない状態では、投資は国内に向かう強制力が働いた。金融の自由化は資金が国内に還流する力を失わせることになった。それ以外にも、政府資金や金融機関が米国債を筆頭とするドル建て金融商品を購入した事により、国富が抜け出す状態になった。
 結果、働けど働けど、自国民への報酬は減り、国内向けの設備投資も減った。日本は米国に抑圧される状況にあり、一定の資金献上を行わされていたとも考える事もできるし、実際そうであったのだろう。
 仮に円安誘導のために日銀が市中の国債を大量に買い上げて、通貨供給を増やしても、その資金が国内に滞留する保障はない。一定程度は米国債を買うことになる。米国債を買い増しすれば、米国債金利は下がり、ドル安・円高要因にすらなる。
 一方、通貨供給を増やせば通貨価値は減り、輸入物価は上昇する。庶民のエンゲル係数は上昇し、生活は更に厳しいものとなる。大きな為替変動が予想される事態となれば、買占めによる騰貴も発生しかねない。
 銀行から資金を取れる信用がある企業や富裕層は、手厚い資金調達力を背景、市場競争力を高め、ますます富める企業が必勝し、貧しい企業が劣敗する構造が強まるだろう。