TPP批准後の世界を想像する。

1.何が起きるのか想像しずらいTPP
 単に私の問題なのかもしれないが、何が起きるとその結果どうなる、という未来像を把握しずらいように感じる。例えば、原発が爆発したらどうなるのか。収束や避難で人が動いて、その後健康被害が起きる、という一定程度の予測はできるが、事業者や政府がどのような対応をするのかまでは予測しきれない。
 TPPに批准するとなると、話が大きすぎて、ますます判然としなくなる。但し、今起きている事を把握して、その既に起きている現象が更に大きくなる、ということならある程度分かる。
 であるから、今既に起きていることを掘り起こして考えてみる必要があると思われる。
2.除草剤と遺伝子組み換え食品
 ラウンドアップというモンサント社の開発した非常に強力な除草剤がある。ホームセンターで山積みになっているそうだ。農協推奨農薬でもある。
 ラウンドアップにゾウリムシを投入して、生き残ったゾウリムシから抽出した遺伝子を作物遺伝子へ挿入して、除草剤耐性作物を作っているようだ。
 ホラー話のようであるが、ホラ話ではない。
 ラウンドアップは発がん性が指摘されている。また、日本で84年6月から86年3月にかけて、ラウンドアップによる急性中毒が56例もあり、そのうちの9例は死に至っている。農家では、「自殺するならラウンドアップに限る」というブラックジョークがあるそうだ。(1) 
 オギノファームの荻野さんは、父親が農薬を浴びて後遺症を患った経験から、無農薬有機農法を実践している。
 地元の知り合いの農家は「自分達で食べる分には農薬をかけない」と言っていた。
 私が見聞きした限りにおいて判断するにしても、程度の差はあれ農薬の化学曝露被害はかなりあると思われる。

 ロシアや中国では遺伝子組み換え作物を排除する動きがある。(2)
ロシアのプーチン大統領は遺伝子組換作物を放射能汚染になぞらえて、国土を「汚染」させないと宣言したとされる。(岩上氏発言)

 仮に危険な農薬や農作物を国内ルールを変更して排除しようとしても、TPPに批准すると実質的に不可能となる。

 食の安全は体の安全に直結する。ロシアや中国が遺伝子組換作物を牽制できるのは、独立国家であり、国内に主権が存在するからである。日本の場合は主権在米であり、米国政府及び政府を影響を及ぼす国際的大企業の支配を甘んじて受け入れている状態にある。
 本来、国内法で、これらの危険な物を国内に入れない必要があるのだが、TPP批准は国内法よりも上位に位置するため、更に米国のいうがままにならざるを得ない。

3.金融部門の収奪が本丸?
 TPPにはISD条項があり、米国に有利な裁定が行われている(3)。国内法によって米国の企業活動が制限された場合国際投資紛争仲裁センターに持ち込まれ、日本政府に巨額の賠償請求が行われる可能性は極めて高い。
 TPPが持ち上がった時、いの一番に指摘されたのはTPPは郵政民営化の続きで、米国による金融や保険支配体制の確立が目的なのではなかろうか、という事である。(4)
 資本移動も金利も自由な体制では、金融機関の経営を乗っ取られると、安易に外債運用へ資金が回される。実際に郵貯ゴールドマン・サックスの運用人が20兆円を運用していたと言われる。
 小鳩革命の成果として「ゴールドマンの運用人は駆逐」(5)された。年金基金の2000億円がAIJ投資顧問によって”蒸発”してしまったように、郵貯簡保の300兆円が外資に運用委託されて”蒸発”するはずだった、と指摘される。(6)
 しかし、安倍政権は日本郵政の社長を坂篤郎社長から西室泰三社長に差し替え、参議院選挙後、日本郵政アフラックの業務提携が発表した。日本郵政外資生保となってしまった。

 日銀の超量的緩和は米欧金融危機救済金捻出のためだと思われる。安倍政権下で日銀の独立性を担保してきた白川総裁は任期を待たずに退任に追い込まれた。一部の学者が黒田総裁の金融政策に異を唱えたが、大勢は黒田日銀体制と超量的緩和を支持した。

 TPPについては米価がなどの農産物の議論はされるだが、金融面からの議論はあまり行われていないように見受けられる。
 医療皆保険制度を廃止して、医療保険参入もTPPによる狙いだとされる。
生産設備が不要であり、大金が動く金融・保険部門は参入すれば利益確保は容易である。この分野を野放図に解禁すれば、外資に国内資金を海外へ持っていかれる。実際、カタカナ損保・生保が日本市場へ参入済である。

 一方、米国は海外企業へ巨額の罰金を科している。
米司法省はBNPパリバスーダンやイランとの間でドル送金などの金融取引を続けたとして、総額89億ドル(約9千億円)の罰金を科すと発表している。
 武田製薬、アクトス訴訟で米陪審が懲罰的罰金 6200億円の支払い義務があると認定されている。他企業においてもカルテルなどの案件で巨額の賠償を求められている事例が多発している。
 仮に米国側の言い分に正当性があるとしても、賠償金額が大きく、事業存続が不可能となりかねない。
 率直にいって、米国と商売することは高い危険を伴うので、控えるべきなのである。これを声高に言うべきである。
 
4.シェールオイル・ガスの失敗
 シェールガス(オイル)は60気圧で水をシェール層へ圧入して、オイルやガスを汲み出す技術である。自噴しなくなった油田から「エネルギーを投入」してエネルギーを取り出すわけである。当然、環境負荷も高く、収支が悪くなる。
 石井吉徳氏はシェールガスブームに警鐘を鳴らしていた(7)し、ネットでもシェールガスに対する疑問の声が溢れていた。また、石井博士は「メタンハイドレートは資源ではない」(8)と警告している。

 シェールガスは米国とダマスコミとの共労による詐欺商法だった。日経新聞は連日、シェールガスによる米国景気回復を書きたて、NHK住友商事のガス調達に関するドキュメンタリーを製作、放映した。
 その住友商事は米シェールガス事業の売却等を受けて、2400億円の損失を計上した(9)。大阪ガスも損失を290億円計上している。
 挙句に米国はシェールガスを積載したタンカーはメキシコ湾からパナマ運河を経由するために、パナマ運河拡張資金捻出を日本に求めている。
 
 排出権取引も日本からカネを出させる方便に過ぎない。
ヨーロッパが提唱しているISO規格も、有り体に言えば、これもまたカネを出させる方便である(10)。

 詐術が横行している国際的大企業を相手に、日本がきちんと向き合って正邪を判断できるとは思えない。TPPに批准すれば、大挙して外資が押し寄せる。米国系企業が提供し、日本にとって本当に必要な財やサービスならすでに受けている。これからやってくるのは詐欺師か、日本の産業簒奪のために来た連中だと考えて、まず間違いないだろう。

5.産業空洞化が進む
 TPPに批准すると批准国への進出が楽になる。そうなると、低廉な労働力やエネルギーを求めて、日本企業の海外転出が進む。既に都銀のみならず、地銀・信金まで企業の海外進出へ融資している。
 小金持ちな人が
「オラが虎の子を町の発展のために信金に預金するぞ〜」
と預金すると、町の空洞化が進むという仕組みだ。
これがTPP批准でどんどん加速する。
海外への転出で資金需要が発生する。これにより金融機関は利益を得る事が出来る。実際、日本の金融機関は海外への融資は増えているが、国内への融資総額は減っている。
 米国の産業空洞化は金融機関側が利益追求を優先するため、企業海外転出への融資を進めてたことにより発生した。日本は米国の過った道程を追従している。
 本来は企業の海外転出を制限するべきなのだが、日本政府が規制を緩和して海外転出を誘導している。

6.TPP批准や止めるべきだ
 TPPは最終的に流入する労働者や企業転出により、賃下げ要因となるだろう。現在でも正規雇用者が減少し、非正規雇用者が増加している。この傾向が強まり、労働者層に負担がかかることになる。TPPは単なる国際間の取り決めということに留まらず、広く労働者の生活苦を招くことになる。
 米国との商取引でこれ以上何か必要なものが本当にあるのか、多いに疑問である。エネルギー輸入国の米国がエネルギーを輸出するという事があり得るのか、普通に考えれば分かることなのだが、日本企業は簡単に騙された。
 金融部門においてアフラック金融庁に長期検査を受ける「札付きの悪」である。なぜ、そのような保険会社が日本で公的な役割を担っている日本郵政と提携しなくてはならないのか。
 また、度重なる行政指導を受けていたシティバンクは日本での個人部門を閉鎖する。こういった問題企業がTPP批准後は日本へ参入しやすくなる上、「国内法では取り締まれなくなる」。
 それこそは、産業界における無政府状態であり、数々の不公正な商取引で阿鼻叫喚の地獄図会となるだろう。

(1)除草剤耐性作物に使用される農薬はこんなに危ない
http://www5.ocn.ne.jp/~kmatsu/kumikae510.htm
(2)「ロシアで遺伝子組み換えに関連する行為はテロリストの行動と見なして規制する法案:印鑰 智哉氏」 
http://sun.ap.teacup.com/souun/14231.html
(3)産業権益が強奪される
http://ameblo.jp/takaomorimoto/entry-11831399213.html
(4)TPPは「年次改革要望書」の復活であり、郵貯かんぽのカネを収奪する わんわんらっぱー(2011.1.17)
http://d.hatena.ne.jp/Takaon/20110117
(5)ゴールドマンの運用人は駆逐した
http://www.asyura2.com/10/senkyo90/msg/469.html
(6)郵貯簡保の300兆円が外資に運用委託されて”蒸発”するはずだった。
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/e/c05a3d3ef03ce9c05b9070cf0c99d4cd
(7)地球は有限資源は質が全て
http://www1.kamakuranet.ne.jp/oilpeak/
(8)「メタンハイドレートは資源ではない」石井吉徳・元国立環境研究所長
http://www.alterna.co.jp/7097/2
(9)シェールオイル 秋田 埋蔵量は?|住商巨額損失が示唆するものとは。
http://vogue-news.com/akita_oil-shale/
(10)ISOに未来はあるか
http://www.max.hi-ho.ne.jp/rkato/Document/essay/e34isonimiraiwaaruka.htm