自作スピーカーコンテスト2014の感想と雑感

2つのユニットを選択できるという点が今までとは違ってユニークだった。
これにより、短時間の内にScanspeak 10F/8424G00 と 10F/8422-03の比較視聴、及びキャビネット差が分かる内容となった。

10F/8424G00 は ネオジム磁石  17000円程度
10F/8422-03 は フェライト磁石 1500円程度

2mぐらいで聴くと、10F/8424G00 の方が、高音域が専用ツィーターに近く「キラキラ」した感じで聴ける。
磁束密度が高いので、追従性能が良いのだと思われる。
ツィータが不要に感じられるので、本当の意味でフルレンジユニットと言える。

後ろに下がって聴くと、空気でデフューズされて、2つのユニットの高音域のキャラクター差は縮まる。

低域の制動はやはり、10F/8424G00 の方が高いように感じられた。
制動力が増すと、量感が減るので、一般的な意味ではそっけなく聞こえるが、その方が原音に近い、と私は考えている。

10F/8422-03にキャンセルマグネットを装着した出品者の作例は 低域の制動では 10F/8424G00に匹敵するように感じられた。

2つのユニットの価格差が10倍以上もある。

10F/8422-03 は 別の機会で他の作例を聞いたが、やはりフェライト磁石らしい甘さのある一般的な鳴り方で、Fostexフェライト量産品と同じ傾向がある。

10F/8424G00 や 5F/8422T03(ネオジム5cm)は原音に近い、きっちりした鳴りである。
オーディオの場合、何が良いとは言い切れない。
個々人が好みの音の志向があるからである。

私は本源的に原音再生を目指すべきだと思うのだが、趣味として捉えると、何が良いのかは一概に言えない。
つまり、フェライト磁石ユニットはそれなりの味がある。

個人的にはネオジム磁石ユニットに未来を感じる。
Fostexではネオジム磁石を用いたツィーターがあるが、フルレンジは発売していないし、発売する予定もないそうだ。
ここは、ぜひともネオジム磁石を用いたフルレンジユニットを発売して欲しい。

また、ネオジム磁石を追加した形で磁束密度を稼ぐ方法で音質を良くする方法がある。
一般的に反発側で装着する方が良いとされるが、吸着側での装着の方が音質が良いとする報告もある。

FE103En-S補助マグネットを付けての試聴 [スーパースワン]
http://sasha3.blog.so-net.ne.jp/2010-06-07

その場合磁束漏洩が増すが、昔のような磁力に影響を受けやすいブラウン管型のテレビもないので、あまり問題ではないだろう。

10F/8424G00は高いが、5F/8422T03ならペアで3000円程度で買える。音楽之友社の方で先日2700円(税込・ペア)で再販された。
はっきり言って激安である。
5F/8422T03は自作スピーカー(作るのはキャビネットの方)の入門として最適だ。

これに3000円程度のデジタルアンプキット(USB接続)で、パソコンから制御すれば、廉価でかつ高品位のオーディオシステムが構築できる。

オーディオメーカーとしては、そんな安い物でシステムを組み上げられたら、おまんまの食い上げと思うかもしれないが、絶対に一定数は上位のシステムを目指してお金を投ずる様になる。オーディオの分野を耕すには、裾野を広げることがまず第一だと思われる。

結局、若年層はヘッドフォンに流入している。住宅環境の問題もさる事ながら、一般的なスピーカーは振動板が重く、ある程度パワーを入れて音量を上げないと真価を発揮しない。
小口径で、軽量振動板、小音量でも微細な音が聞き取れるスピーカーを用意すべきである。
皮肉な事にUSB接続のパソコン用小型スピーカーで音が良い物がある。ネオジム磁石である(たぶん)事も影響しているのだろう。
SoundSticks III
http://kakaku.com/item/K0000153987/

そう考えると、もはや、パソコンにアンプ内蔵スピーカー付けて、それでおおよそ用が足りてしまっているのかもしれない。
ただ、それだと、低音が不足する。低音専用ユニットを使うと、何か独特な「色付け」がされているように聞こえる。
やはり、低音を自作キャビネットで補強してこそ、フルレンジの真価が発揮される。
シンプルなシステム方が音はピュア(原音)に近い。
フルレンジユニットの自作スピーカーはネットワーク回路やデバイダーなどが入らないので、基本的に音が良い。
2Wayのスピーカーシステムはネットワーク回路で音のトランジェントが失われる。

これはスピーカーに限らないのかもしれないが、基本的にシンプルな方が良い。
質も良いし、費用も低くて済む。

自作スピーカーでは、ネットワークにコイルを用いて、音の重心を下げる手法もあるが、やはり、聴覚上「音がなまる」感じが出てしまう。キャビネットの設計を工夫して、ネットワーク無きスピーカーシステムを目指すのが本筋だと思う。
そういった観点からも、高音域が充実しているのでツィーターを不要にするネオジム磁石ユニットによるフルレンジ自作スピーカーは有用であると言える。

(参考)
Stereo2013年8月号付録スキャンスピーク製スピーカーユニット
http://d.hatena.ne.jp/Takaon/20140603
Stereo誌付録ScanSpeak 5cmを使ったスピーカーシステム視聴体験記
http://d.hatena.ne.jp/Takaon/20140224


オーディオサークル『ミューズの方舟』主催自作スピーカーコンテスト2014
http://d.hatena.ne.jp/musenohakobune/20140824
Scanspeak 10F/8424G00 または 10F/8422-03(Stereo誌2012年8月号付録)