上級国民娯楽場であるゴルフ場の環境破壊

 グーグルマップで首都圏近郊を見ると「メダカが集まっているように見える」ところがいくつもある。
拡大すると、ゴルフ場のコースが見えてくる。
木を伐採し、山を切り崩し、谷を埋め、農薬を大量に投入して芝を維持する。
除草剤だけなくて、殺菌剤、殺虫剤も投入される。
虫は減ってプレイするには快適かもしれないが、環境負荷は高い。
とくに除草剤による害が強く、土壌を破壊し、発がん性が指摘されている。
ゴルフ場から流れだした農薬は飲料水や農業用水に悪影響を及ぼす。
揮発した農薬は大気に漂い、ゴルフ場関係者や周辺住民が吸引して、健康被害を発生させる。

 中曽根政権が1987年に制定した総合保養地域整備法(通称:リゾート法)にゴルフ場やスキー場やリゾートマンションが各地に建設された。
1989年北海道広島町でゴルフ場が使用する農薬が流出し、養殖魚9万尾が死滅するという事件をきっかけにゴルフ場に対する反対運動が展開されるようになった。
ゴルフ場のみならず、スキー場も閉鎖され、リゾートマンションは買い手が付かない「負動産」状態のところもある。

バブル崩壊後、ゴルフ場の破綻が相次ぎ、破綻ゴルフ場は民事再生法により、会員権所有者は債権放棄させられた。
環境破壊に経営破綻による経済的損失の発生を経て、一体ゴルフ場は誰が得なのかと言えば、開発関係者やゴルフ場運営関係者は利益を得たのだろう。
ゴルフ場は社交場として機能しているので、一定程度の費用を払ってでもプレイに参加する人たちがいる。

昔、中堅マンションデベロッパーの課長がゴルフの話をしているのをよく聞いていたが、そのデベ自体が民事再生適用となってしまった。
耐震性能が高いマンション建設を行っていた比較的良心的なデベだったので経営が行き詰まったのかもしれないが、ゴルフなんかで遊んでいる余裕はなかったのだけは間違いない。
90年代以降、日本経済が低迷した理由の一つに余暇に時間やエネルギーを費やしたのも大いに影響していると考える。
時間はともかく、ゴルフ場の維持には膨大なエネルギーが必要である。
スキー場も同じだろう。
プレイヤー遠方まで車を使って行くだわけだが、ゴルフの場合は「車格」が意味を持つ。
高級セダンを購入して、それを運転していくことに「意味」がある。
誠にもって馬鹿馬鹿しい限りなのだが、そういった社交を通じて仕事が配分されるので、ある程度カネを払っても採算があう。
しかし、そういった費用は財やサービスや財政へしわ寄せが来る。
つまり、ゴルフ遊興費により、財政予算は膨らみ、財やサービスの値段が高くなる。
そうやって、日本は国際的な競争力を失いつつあるのではなかろうか。
また、仕事の質を高めるような地道な努力をしている人よりも、適当におべんちゃらいってゴルフ接待で取り行った方が出世して、給料も増えるとなれば、実直な努力を放棄して、ゴルフの練習に熱を上げる。
ゴルフ練習場が相変わらず盛況なのはそういった事情もある。
ゴルフの場合、環境負荷の問題だけでなくて、日本の産業構造における「人的劣化」を誘発している可能性が高い。

ソニーハワード・ストリンガー会長は社外取締役をゴルフ接待して、「自分の高い給料を取締役会で認めるように」させていたそうだ。
生え抜きを「買収」するのは難しいかもしれないが、所詮は雇われ社外取締役はカネでどうとでも転んでしまう。
こんな会社を腐らす社会取締役制度はやめるべきである。

余談だが、子会社のヤクザへの貸付という些細なことでもめた「みずほFG」の社外取締役には女・竹中平蔵の異名を取る大田弘子が就任しているし、
経産省事務次官望月晴文は日立製作所社外取締役に就任し、日立はフルMOX大間原発を建設している。


「アリとキリギリス」の例えではないが、財やサービスの質や「費用対効果」を引き上げる地道な努力をした法人や国が国際社会で勝ち残る。
延々と時間とエネルギーを使って遠方へでかけ、日長一日ゴルフを繰り返して、それが一体誰のためになるのか?

ゴルフのキャディさんは農薬漬けの芝の上を毎日歩き続けるので、化学暴露による健康被害が出るという。
一見、ゴルフ場は整然としているが、自然から鑑みての「不自然な整然」さは森林伐採や土地造成や農薬の大量投入で維持されている。
芝の状態はゴルフプレイの質に直結するので、「グリーンキーパー」が芝維持のために農薬を投入する。
かつての様に予防的に農薬、特に殺菌剤を散布して抑えこむという方法から、限定的に農薬を散布する方向へ変わってきているとはいう。
雑草の存在が許されず、芝が青々としている事が絶対命題のゴルフ場が農薬散布でどの程度「手加減」していると言えるのか。
ちなみに、農地1平方キロメートルあたりの農薬使用量は日本は世界一であり、猛毒の除草剤ラウンドアップを農協が推奨し、ホームセンターで大々的に販売されて使われている。


更に怒りの火を注ぐのが、麻生財務大臣のゴルフ税廃止議論である。
ありとあらゆる間接税や直接税が引き上げられているというのに、ゴルフ税は廃止するというのである。
法人税率の引き下げ議論も出ているが、大企業の実行法人税率はすでに極めて低い状態にある。
上級国民たる娯楽に対する課税や大企業への課税は引き下げて、主に労働者が担税する消費税は増税だというのだ。
あまりの不条理さに呆れてしまう。

詰まるところ、上級国民は下級人民を馬鹿にして収奪しまくっているのであり、下級人民は叛旗を翻すことなく、毎晩テレビを見て呆けている状態にある。


(参考)ゴルフ場〜農薬使用量の実態
http://ameblo.jp/sakuramame/entry-10070797364.html
ゴルフ場は自然破壊の張本人
http://kawnkilaumondii.net/dir/13
リゾート法と地域社会 - 東京成徳大学
https://goo.gl/4ZGcTp
好き放題やり始めた安倍政権!「ゴルフ税の減税で507億円も税収が減る。対策として自動車税増税する」
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-4417.html