劣化ウラン弾の非人道性と日米核産業の関係

 1991年湾岸戦争が勃発し、戦争中の劣化ウラン弾の使用総量は800tに上った。琉球大学教授矢ヶ崎克馬によると「広島に落とされた原爆の14000倍から36000倍の放射能」にあたるとしている。1999年NATO軍がコソボ紛争に介入した。米空軍A-10攻撃機が30ミリ砲弾31000発(劣化ウラン約8t相当)を発射した。2003年イラク戦争では米中央軍空軍報告書によると30mm弾311,597発を使用したされる。5発中4発は劣化ウラン弾であり,使用総量は劣化ウラン75tに相当する。
 
 劣化ウラン弾は比重は鉛よりも1.7倍もあり、金属性装甲に対して強力な貫通力を有する。ウラン238の自然発火性により戦車に当たった瞬間に高温になり爆発する。砲弾の70%は気化し、参加したウラン238の微粒子となる。微粒子の60%は直径5μ以下と極小であり、風に乗って何kmも運ばれる。地表に沈着した後も、再飛散が起きて広域を汚染する。

 日本の原発に必要な濃縮ウランは、資源エネルギー庁核燃料サイクル産業によると、国産150トンに加え、700トン輸入されており、そのうちの580トンは、米ウラン濃縮会社(USEC)製である。USECは米エネルギー省のウラン濃縮の民営化によって作られた企業である。
 2001年4月25日関西電力は「美浜・大飯・美浜原発に反対する大阪の会」との交渉で、USEC社に委託している、ウラン235濃縮過程で出てきた劣化ウランについて、その全量を無償で同社に譲渡していることを認めた。無償譲渡の理由については、「いらないもの」だからとしている。2004年中部電力株主総会応答で、浜岡原発の廃棄物である劣化ウランはUSEC名義で回収されていることを認めている。
 2001年1月20日通信社ロイター報道では、USEC社ケンタッキー州パデューカ濃縮工場およびポーツマス濃縮工場の劣化ウランから劣化ウラン弾が製造されているとされる。
 社民党北川れん子議員質問主意書によれば、関西電力によるアメリカへの劣化ウランの譲渡は、原子力基本法第二条に定める基本方針「原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限」る規定に反し、先に述べた政府の武器輸出三原則および憲法の平和原則にも背反するのではないか、指摘している。

 USECは当初、石炭火力発電所を電源にガス拡散法でウラン235の濃縮を行ったがこれを退役させ、巨大遠心分離器を用いた遠心分離法に失敗した。米連邦会計検査院がエネルギー省(DOE)とUSECの劣化ウラン再濃縮事業に疑問を呈していた。
 USECは米国内に大量に貯蔵されていた兵器級高濃縮ウランに加え、ロシアで貯蔵されていた500トンの核兵器解体ウランを20年契約で1994年から購入している。購入時には、兵器転用できないように低濃縮ウラン化されている。途中から自国の劣化ウランを輸出して露核燃料輸送会社のテネックス社で混ぜて輸入した。しかし、USECを通さずに露テネックス社と直接契約する電力会社が増えて収益は悪化した。
 2014年3月5日USECは米連邦破産法11条の適用申請により経営破綻した。破綻したUSECの後を継ぐのGE日立レーザー濃縮(GLE)である。パデューカ濃縮工場の劣化ウランをGE日立レーザー濃縮(GLE)を使って再濃縮しようとしている。翌月4月に日本政府は武器輸出解禁に踏み切った。USEC社による濃縮ウラン供給維持の為、米国の意向により武器輸出は解禁された。

 米国におけるウラン濃縮に明確な安全基準は存在しない。ウラン濃縮は天然ウランのみならず、サウスカロライナ州サバンナリバー核施設、ワシントン州ハンフォード、テネシー州オークリッジなどのプルトニウム生産原子炉から出たウランも再利用されている。
 これらの核施設から作られた劣化ウラン弾頭には、プルトニウム239、ネプツニウム237といった同位体で汚染されている。これらはウラン238に比べて時間当たりの放射線量が多くより一層危険である。


参考元
狂気の核武装大国アメリカ ヘレン・カルディコット 集英社新書 P173-

日本は濃縮ウランのOEM生産工場だった
http://link-21.com/atomicenergy/008.html

DoE uranium transfers in question
http://www.world-nuclear-news.org/C-DoE-uranium-transfers-in-question-1106147.html

劣化ウラン関連年表
http://www10.plala.or.jp/shosuzki/edit/ippnw/dunenpyo.htm

劣化ウラン及び劣化ウラン兵器
http://www.nuketext.org/du.html