電通と原発

 電通の広告シェアは5割であり、原子力関連では8割の広告を支配している。原発事故が起きると電通社員がメディア側に報道を自粛するよう要請する。電通経由の広告で成り立っているメディア側は電通の意向に逆らえない。東京電力一社だけで年間260億円、電気事業連合会加盟10社で合わせて1000億円が、広告宣伝費として使われてきた。
 福島第一原発事故が起きて以後、原子力関連広告は減少したが、代わりに福島の農産物を広報する仕事を電通は受注した。農林水産省は2008年に「食料自給率向上に向けた国民運動FOOD ACTION NIPPON」という事業を立ち上げた。2011年の同事業の予算は23億円「フード・アクション・ニッポン推進本部事務局運営」として、電通一般競争入札で受注している。電通は、米粉の消費拡大の広告なども受注しており、2011年の単年度で総額71億2千万円もの事業を農水省から受注している。 「食べて応援しよう!」運動は農水省の委託事業として、電通が受注した広告事業であり、食糧自給率促進広告の一部なのだ。「FOOD ACTION NIPPON 推進本部事務局」は電通本社内にある。
 「食べて応援」の問題は食品の安全が担保されていない事にある。検査は福島県農産物で1276点であり、その他の県はそれ以下である。全量検査ではない上に、検査結果は100Bq/kg以下ということしか情報開示されず何ベクレルだったのかという発表すら行われない。ドイツの安全基準は大人8Bq/kg以下、子供4Bq/kg以下である。
 台湾は2011年3月の東京電力福島第1原発事故の直後に福島など5県からの食品輸入を禁止した。日本は禁止解除を求めていたが、産地を偽装した5県の食品が台湾で流通していたことが2015年3月に発覚し、逆に規制が強化されることになった。産地の表示があっても偽装の疑いがあり、消費者は安全の指標を失った状態と言える。