自作スピーカーの利点と音楽ソースのあり方

1.若者はヘッドフォンへ流れてしまった。
 「ヘッドフォン祭り」などのイベントでは若者が大挙して押し寄せてくるらしい。
自宅環境を考えるとヘッドフォン一択という方もいるのだろう。
ヘッドフォンでもインナーイヤー型のものは鼓膜への負担が大きいとされる。
ヘッドホン難聴は決して治ることがない。
日本産業衛生学会の騒音安全基準では、85dBで暴露時間480分以下としている。
 100デジベルの音を15分以上聴くと難聴になり、聴力の感覚細胞が傷つけられる。
イヤホンとヘッドホンの音は、高い周波数の再生特性が良い。
周波数の高い音ほど耳に負担がかかる。(要検証)
この場合、高音域の聴覚上の音圧に比してという意味だろう。
私自身はイアホン・ヘッドフォンの類は使わない。
イアホンは精緻な音が聞けるが、上記の様に、耳に負担がかかり、中期的には聴力が低下する。
ヘッドフォンなら耳への負担はイアホン程ではないとは思うが、やはり窮屈であるのと、
以前買ったヘッドフォンの耳あて同士が張り付いて破けてしまったので、それからヘッドフォンは購入していない。
(参考)イヤホン・ヘッドホン難聴に注意!自覚症状と予防法や治療法について
http://nothing-serch.com/earphone-2-1455.html


2.自作スピーカーの使い所
かつて、江川三郎氏がニアフィールド・リスニングを提唱していた。
パソコン時代になって、至近距離で聞く小型スピーカーの存在意義が増してきた。
一般家庭が、液晶テレビの内蔵スピーカーだけでは音質に物足りなさを感じて、
両脇にスピーカーを置くという需要はあると思われる。
また、ミニコンポ市場にかなりの数の新製品が発売されているので、購入層はあるだろう。
メーカー製は低音の量感を稼ぐために、振動板質量の重いスピーカーユニットを使う。
低音量感は稼げても、音の再現性が落ちる。
これに対し、自作スピーカーの利点は、軽量振動板と強力な磁束をもったユニットを使える。
市販スピーカーよりも、過渡特性の良さがある。
自作の良さは置くスペースに併せてキャビネットサイズを設計できる。
もしくは、調度良いサイズに設計されたものを選択することができる。
パソコン用、テレビ用、フロアースピーカー用と様々な選択肢がある。
但しスペースファクターやC/Pを考えると、中国生産のバスレフキャビネットに自作では勝てない。
自作が通用するのは、メーカー製にないユニークな設計のものや、バックロードホーンや共鳴管スピーカーだ。


3.常時音圧を稼ぐために音質が犠牲になっている。
生音に近い形でパッケージソフトが収録されていれば、自作スピーカーの効果がはっきりするのだが、現在は録音過程の加工作業によって、ダイナミックレンジが狭くなっている。
マスタリングエンジニアがミキシングにおけるコンプレッションというエフェクト作業により、同一のボリュームでいかに音を大きく(音圧を高く)聴かせるかということに腐心してきた。
録音時には24bitであるのに対して、CDの分解能が16bitであるので、ダイナミックレンジ差は200倍以上あり、一定程度コンプした方が、より音圧が稼げる。
一つには、ラジカセなどの小音量で聞く装置でも、音が派手に聞こえるようにするという大義名分もある。

『金井氏:コンプレッサは音づくりのために個々の楽器にも使います。
しかしミックス全体に最後にかけるコンプレッサをトータルコンプといって、私が当初問題視したのがこれです。
特に音圧競争の道具に使われるとオーディオ的な質感を損なうケースが多いと思います。』
参照元
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20071112/dal303.htm

基本的にコンプレッションをかけるのは、楽曲にボーカルが浮かないように調整している要素が大きい。
アニメ系の歌い手さんの声量が比較的小さい事も影響していると言われている。
これは私見ではあるが、コンプレッションをかけたほうが、一定声量で歌い続けているように聞こえるので、歌い手の技量を補う作用があるのではないかと邪推する。
よく聞くとコンプレッション以外にもエフェクトがかけられている。
特に男性ボーカルは地声がざらついているので、強くエフェクトがかかっている。
デジタル時代になって、鮮度が高い状態で再生できるようになった。
そのこと自体は軽量振動板&強力磁束マグネットユニットを使う自作スピーカー派にとっては利点ではあるが、
かねてより、より一層、ソースを選ぶようになる。

SACDはマスタリング過程で大きく差がでる。
ドイツ・グラムフォンは32bit 384kHzにアップサンプリングしてからDSD変換しているので、音が良い。
オーケストラが前に飛び出してくるような錯覚すらする。

しなやかな音がするSACDに対して、DVD-AudioはCDを骨太にしたような音になる。
ロック系アーティストはSACDのしなやかでガッツの無い音を嫌う人もいるそうだ。
日本ではSACDのマスタリング工場がソニーしかなく、価格も高いと指摘されている。
SACDソニーの提唱した企画なのだが、皮肉なことにコストを下げないソニーせいでなかなか普及しなかった。
現在SACD分野において、欧州のクラッシック音楽ソフトの方さかんでさえもある。

私自身は、もはや音楽を聞いているのか音質を聞いているのか、よくわからない状態にある。
音楽性も高く、技量も高く、音質も良いソースがあれば良いが、すべてがそういう訳ではない。
また、音楽的な好き嫌いがある。
フルオーケストラの交響曲を聞くのは、20世紀の曲が多い。
なぜか古典的なのはあまり意欲的に聞きたいと思わない。
ギターの先生に聞いたら、コードが少ないからではないかという返答だった。
私はジャズ系は殆ど聞かない。
どの曲を聞いても似たような感じに聞こえてしまう。
演歌も曲作りが似ており、曲ごとの差異が少ないように感じる。
ロックやポップスのは曲ごとの差が明瞭である。
歌詞があることも差異をつけるのに寄与している。
私がアニメ系のサウンドトラックをよく聞くのは、音楽的な良さや一定程度の高い音質が確保されているといのもあるのだが、
実際には楽曲を通じて作品の世界観を反芻作業をしているようにも思える。
(参考)YouTubeラウドネス規格を導入!J-ポップやボカロ曲にも影響が?音圧戦争その終わりのはじまり
http://what-a-wonderful-world.hatenablog.com/entry/2015/03/19/004330


4.美音スピーカーの世界
 美音というのが存在する。本当に美しい響きがするのである。
Telefunken"085aモニタースピーカー"
http://jirou.jugem.cc/?eid=1203
http://www.gokudo.co.jp/
というのを聞いたが、びっくりするほど美音だった。美音過ぎて発売停止になってしまったという噂まである。
一聴して他のシステムとは違う音色なのが分かる。
スピーカー構成は解説書などからおおよそ分かるが、使っているユニットが分からない。
実質的に後面開放型のようである。なので、低音はあまり出ない。
メーカー名から察するにドイツ製のようである。
写真にあるとおり、プリアンプや真空管アンプはかなり高価な品物である。

Fostex GX103も似たような美音がする。
GX103はマグネシウムツィーター+マグネシウム合金ウーハー×3発の組み合わせである。
金属系振動板のせいか、ある程度以上音量を入れると美しい響きがする。特に弦楽器の響きは素晴らしい。


5.家で生音に近い音を聞きたいという欲求
 さて本題だ。
 自作スピーカーは家で生音に近い音を聞きたいという欲求から発している。
映画館はオーディオトラックがアナログからデジタルになって、かなり音質は向上したが、基本的に質より量であり、低音はブーミーであり、台詞も明瞭とは言いがたい。
ライブハウスは低音の量感に比重をおいている。
15インチウーハーがボーカル帯域もカバーするので、「だみ声ボイスチェンジャー」状態である。
だが、そういった惨状に対してクレームというのを聞いたことがない。
「そいうものだ」と納得してしまい、オーディオメーカーのスピーカーも影響を受けているのか、おおよそウーハーとツィーターの2ウェイであり、殆どのメーカーは貧弱なフェライト磁石を使ったウーハーを使う。
ユーザーもオーディオ機器を買っても「出口が塞がっているに等しい」ので、プレイヤーやアンプの品位を上げても成果が得られない。
努力しても「成果」が得られないので、オーディオから離れていってしまう。
私は長岡鉄男先生設計のD-55にD-208Sを装着して使っていた。
中高音がつっぱらかってくる上に、低音が薄かったのだが、微少な変化を聞き分けるには良かった。
しかし、今にして思えば、バックロードホーンで20cmユニットは6畳間には大きすぎた。
BHは高能率なので10cmユニットで充分なのである。
ScanSpeakの5cmユニットをスパイラル型BHに装着した物を聞いたが24畳の会議室を鳴らしきった。
ユニット後継が小さい方が、ピストンモーションする帯域が高い周波数までカバーする。
ユニットが大きいと分割振動帯域が降りてくるし、振動板質量(Mo)が大きいので過渡特性が悪くなる。
そもそも、ウーハーというのは低音が出るユニットという訳ではなく、中高音が出ないようにダンプしている低音質ユニットなのである。
だから、フルレンジには音質でかなわない。
口径が大きいほど振動板は重くなり、分割振動の問題が出てくる。

マッドマックス2015劇場版に登場したクルマで、後ろが和太鼓4発、前面は数十個のスピーカーユニットを装着し、ギタリストがギターを弾くとネックから火炎を吹き出す。
ビジュアル重視の車だが、スピーカーは結線していないにしても、相当な労力が投入されたと思われる。
石油の取り合いをする話なのだが、燃費の悪そうな車が走っているのはご愛嬌か?


和太鼓の低音は軽くて早い。
これをスピーカーで実現するのは難しい。
BHは低音をホーンで増幅するので、小口径ながら、早い低音が実現できる。
長岡派でもBHにしがみついているのは少数になりつつある。
フルデジタルアンプが出てきて、増幅段における再生の忠実度は上がった。
デジタルアンプの真価はBHでこそ発揮できる。


6.ネオジム磁石スピーカー革命
 日立金属がネオジム磁石の特許を持っており、日本企業に対して特許料を徴収している。
外国企業は徴収されないようなので、廉価のスピーカーユニットにネオジム磁石を搭載してきている。
ScanSpeakのネオジム磁石フルレンジユニットは近年では特筆すべき革命的事象だった。
一言で言えば、高域に至るまで過渡特性が良いので、ツィーターいらずの真の意味でのフルレンジを実現した。
ScanSpeakのフルレンジユニットについて、自作ユーザーでの反応があまりないようである。
廉価で高音質を実現する素晴らしいユニットなのだが、もてはやされている様子がない。
ユニットがそれほど高くないのだが、フェライトユニットを一蹴する音質なので、自作のメリットがある。
もっとも、メーカー製でもフルレンジ小型ネオジム磁石ユニット搭載SP+サブウーハーでは、音の良いものもある。
メーカー製のスピーカーを買うのならネオジム磁石ユニットを使ったフルレンジタイプものを選ぶと良いと思われる。


(参考)
第73回/江川三郎先生の40年にわたる業績を振り返る [村井裕弥]
http://musicbird.jp/audio_column/p73/
TQWT(Tapered Quarter Wave Tube テーパー付1/4波長管)
http://vicdiy.com/products/tqwt/tqwt.html
TQWT方式にみる音質の特徴
http://www2r.biglobe.ne.jp/~TSUKI/tmsr/tmsr020b.pdf
TQWT+ScanSpeakStereo誌付録
http://blog.livedoor.jp/massivesound0730/tag/TQWT
「Europo Audio」
http://www.europe-audio.com/intro.asp
http://www.europe-audio.com/Producten_c.asp?Productgroep_B_ID=359&Productgroep_A_ID=85
MJ無線と実験 2014年 07月号
http://www.amazon.co.jp/dp/B00K7HGJ6A/ref=wl_it_dp_o_pC_nS_ttl?_encoding=UTF8&colid=1237VSKYBKLBO&coliid=I3CQSWA0HFYXPI
作りやすい高音質スピーカー: 測定とシミュレーションで高性能を徹底追及
http://www.amazon.co.jp/s/ref=dp_byline_sr_book_1?ie=UTF8&field-author=%E5%B0%8F%E6%BE%A4+%E9%9A%86%E4%B9%85&search-alias=books-jp&text=%E5%B0%8F%E6%BE%A4+%E9%9A%86%E4%B9%85&sort=relevancerank